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理事会声明 「対馬・小島、両中医協委員の罷免を求める」

対馬・小島、両中医協委員の罷免を求める

 

神奈川県保険医協会

理事長 平尾 紘一


 1月14日の中医協で「外来管理加算」に関する日医の独自調査結果が示され、改定時の当初予定額と比して▲508億円の大幅な乖離が出ていることが判明。診療側の藤原委員が、医師の診察時間に制約を設けた「5分ルール」が引き起こした問題を衝くとともに、是正のため診療報酬の期中改定を要望した。これに対し、支払側の対馬委員は「減収理由」の途中改定はない、「患者の視点」がなく理由が希薄と突っぱねた。また小島委員は算定をやめた医療機関は「今まで何をやっていたのか」と批判した。しかし、事実経過を踏まえれば診療側委員の是正要求は、道理ある主張である。「外来管理加算」をめぐり官僚が作成した資料の虚偽や作為が明るみになり、財政影響の未曾有の乖離という "大失態"が明確になったいま期中改定は急務である。われわれは、依然、反省を一顧だにせず厚顔無恥な対応に終始する対馬・小島、両中医協委員の罷免を求めるものである。

 

 「5分ルール」は病院救済の財源捻出のため、公益委員裁定の下、影響額240億円として診療所側に強いられた措置である。中医協で、患者1人の「診療時間」が5分超の医療機関が9割、との厚労省が提示した資料(ヒストグラム)を基にこれを導入することとし、影響額は外来管理加算総額の1割程度とされていた。

 しかしながら、蓋を開けてみると、(1)改定で導入された5分ルールは、医療機関が医師・看護師などチーム医療に要する「診療時間」ではなく、医師のみが関わる「診察時間」とすり替えられた。よって、極めて狭義の時間カウントとされ、多くの医療機関が算定できなくなった、(2)そもそも中医協に出された厚労省の資料は、患者を診た正味の「診療時間」ではなく、診ていない時間を含む「標榜時間」を患者数で除して作成されたものであり、(3)その資料のデータは、目的の違う別な調査からの流用だった―などが次々と公になり、極めて杜撰でいい加減なものである。

 

 判明した影響額▲748億円は、見込み額240億円をはるかに上回っており、医療施策の立案能力の欠如を露呈した。しかも、この「5分ルール」は病院救済を目的としたが逆に、200床未満の病院でも外来管理加算の算定が激減し、医療過疎地から中小病院を次々と消失させる事態を招いている。甚大な影響額と大幅な見込み違い▲508億円はともに、中医協委員の責任問題である。

 診療側は、その是正を当たり前のこととして要望したにすぎず、その是正をもって中医協の責任を果たそうと提案しているだけである。

 

 影響額の乖離は厚労省の医療費動向でも裏打ちされている。08年度医療費は伸び率2.6%(対前年)で予算編成されているが、過日発表された08年度上半期の医療費伸び率は2.2%と、▲0.4%の乖離が現れている。とりわけ診療所の伸び率は、想定2.49%に対し実際は0.7%にすぎず、▲1.79%(年間換算▲1450億円)の大幅な乖離が出ている。08年改定で診療所の主たるものは外来管理加算であり、是正要望は理のあるものである。

 

 対馬委員は中医協で「患者の視点」を強調したが、患者にとって医療機関が身近に存在することが第一義的な要望である。地方の中小病院が閉院する実態がありながら、診療側の是正要望を退ける発言は自家撞着も甚だしい。また第一線医療への不理解も指摘したい。医療は大病院の急性期医療のみで成立しているのではない。一次医療、二次医療、三次医療と重層構造で、軽症、慢性疾患、初期救急、急性期入院、慢性期入院、救急救命などの疾病・負傷を、診療所、中小病院、基幹病院、大学病院、救命センターなどが機能分担をし、成り立っているのであり、第一線医療を蔑ろにすれば、全体の構造バランスが崩れる関係になっている。医療機関の経営の安定は無視できない重要な問題である。

 

 小島委員は「問診だけで3?4分はすぐかかると思うが」と外来管理加算を算定できなくなった医療機関を批判したが、医療の現場に無知な素人談義にすぎない。

 外来管理加算は初診時ではなく再診時の話である。多くの患者の治療にあたっている医療機関は、初診時の診断に基づき再診時に効率的な医師の診察と看護師・スタッフ等によるチーム医療を展開している。初診に時間をかけても、再診時は、臨機応変に対処し、少ない医師数の状況下でも、「3時間待ちの3分診療」の改善のために努力をしている。その努力を逆なでするのが「5分ルール」である。

 

 また再三、再四われわれは指摘してきたが、時間で診察・診療は評価できないのである。再診時に心筋梗塞のような急性症状で来院した場合、苦しむ患者にいたずらに時間をかける医師はいない。すぐに処置をするか、病院に紹介する算段をとる。「5分ルール」は医療現場に無知な官僚の机上プランであり、招来された事態は"人災"である。

 

 診療報酬とは現実の医療を経済評価するツールであり、外来管理加算とは、もとは内科加算であり、内科系医療機関の再診評価のために考案された調整弁でしかない。主客転倒した点数規定は、医療的に論外である。

 

 振り返れば、08年度予算は、社会保障2200億円(国庫)の削減のため、診療報酬マイナス改定と後発医薬品使用で計880億円が捻出され、残りの大半を政管健保の国庫負担のうち1,000億円を健保組合が肩代わりすることで決着となった。しかし、関連法案の不成立により1,000億円は第二次補正予算での支出で処理することとなり、健保組合は何ら「痛み」を伴っていない。

 犠牲を強いられた診療側は、理不尽な額の負担を担わされている。これが現局面の構図である。

 

 いまや、がん研有明病院のような、がん治療の先端医療機関でさえ経営危機に瀕している。診療報酬抑制や点数操作により、医療機関はおしなべて再生産費用を捻出できない、危機的構造に陥っており、その構造を更に悪化させたのが「5分ルール」である。

 

 対馬・小島、両中医協委員は、委員歴も長く発言力も大きい。われわれは、この失策、失態を前にしながら、医療機関の診療縮小、入院ベッドの廃止等によって患者が甚だ迷惑を被ることを反省もせず、強弁を繰り返す両委員は、日本の医療のため百害あって一利なしと考え、罷免を厚労大臣に求めるものである。

 

 あわせて新任の遠藤会長には、これらを踏まえ、診療側の要望に真摯に応えるよう期待したい。

2009年1月30日