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ゼロの会声明 「反貧困 療養権の保障のため 医療費の窓口負担ゼロを求める」

反貧困 療養権の保障のため 医療費の窓口負担ゼロを求める

 

医療費の窓口負担「ゼロの会」

責任者 池川 明


 世界的な金融不安に端を発した国内産業の業績不振と景気悪化の下、派遣社員の首切りや非正規雇用社員のリストラが、冬空の中で次々と起こっている。

 「格差社会」はその色合いを濃くし、収入200万円以下の勤労所得者(ワーキングプア)1千万人超、非正規雇用割合34.5%、完全失業者270万人と、「労働形態の多様化」の美辞麗句の下創出された労働市場は、最低賃金の遵守すらおぼつかない惨状となり、多くの人々が生活の安定を欠いている。

 このような家計状態の中、病気であっても経済余力がなく治療ができない人が多数でている。この受診抑制、受診中断は窓口負担が3割となった03年以降、歴然としており、とりわけ35歳?64歳の中高年層に確実に影を落としている。また1割負担の高齢者でも孤独死という惨劇さえ引き起こしている。

 われわれは、この状況を踏まえ、患者の窓口負担をゼロとし、誰もが病気の際に経済負担をせず、安心して受診できる社会の実現を強く求めるものである。

 

 連日、報道される派遣労働者の首切りは、住居の剥奪と一体となっておりホームレス化を伴っている。近年、日本の結核罹患率は19.8(対人口10万)と高く、米国、カナダなど先進諸国の5倍にも上り、「結核蔓延国」(厚労省)となっている。とりわけ大都市部で罹患率が高く、ホームレスや社会的弱者、医学的弱者(糖尿病、ガンなど)で増加をみせ、結核の12%が発見時に手遅れと重症化している。結核は早期発見・早期治療が極めて重要である。米国は80年代に罹患率2桁、治療困難な多剤耐性結核が患者の5%を占める深刻な事態となり、89年に結核対策予算を100倍に増やし罹患率1桁に戻したが、日本の現状は米国の80年代に酷似した状況となっている。

 つまり受診機会の確保、早期受診のシステム構築は喫禁の課題である。結核以外の糖尿病や高血圧などの疾病も、重症化による医療費や労働力の劣化などを鑑みれば社会的損失は同様である。そもそも、"人は城、城は人"であり、国民の健康があってこその国である。

 

 われわれは、07年1月に、「医療費の窓口負担 ゼロの会」を立ち上げ、患者負担の解消を提唱し、各界の著名人30名を始め全国で1万2千名を超える賛同とマスコミの高い関心が寄せられてきている。

 

 日本の医療保障制度は、生存権保障の憲法25条を基盤にし、医療そのものを患者に提供する現物給付を特徴としている。つまり、受診時の金銭負担は前提にしていない。これが制度の基本哲学である。

 この四半世紀、窓口負担率の増加による医療費抑制策が強いられてきたが、患者の8割が使う医療費は全体の20%に過ぎず、窓口負担による医療費の抑制策はそもそも限界がある。すなわち、医療費の10%を縮小するには、患者の4割の受診を完全に放棄させないと達成できないという荒唐無稽な構図にある。事実、政府の報告書(「構造改革評価報告書」)でさえも、医療費の窓口負担率の引き上げは医療費の抑制効果が少ないことを認めている。

 

 実際、医療費抑制の最有力手段は診療報酬による価格操作であり、マイナス改定によりそれを断行し、現在問題の医療崩壊に帰着したのである。

 

 窓口負担ゼロを実現しても、医療費は大きくは膨らまない。先に触れた医療費の構造を考えれば自明である。抑えられていた医療需要が一時的に顕在化するだけである。73年の老人医療無料化がそれを証明している。巷でいわれる、乱診乱療なども診療報酬上の規制や専門家による審査があり、現実的にはありえない構造になっている。窓口負担ゼロに必要な財源は、国庫、地方(公費)、事業主(企業)、被保険者での分担となるが、方法論はいくらでもある。それこそ、国民的な議論と智慧の発揮に委ねられるが、われわれも具体案の提示と議論の用意はいつでもある。

 

 われわれは、病気であるという理由だけで誰もが受診でき、療養権を何者にも邪魔されずに行使できる社会の実現を強く求める。そのことが、社会に安心感を与え、経済活動へも大きく寄与すると確信する。関係方面の深い理解と尽力を強く期待するものである。

2008年12月24日