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政策部長談話 「暴挙、医療実態を無視した指導料の患者一つ算定 フリーアクセス縛り、現物給付崩す『主病ルール』の撤回を求める」

暴挙、医療実態を無視した指導料の患者一つ算定

フリーアクセス縛り、現物給付崩す「主病ルール」の撤回を求める

 

神奈川県保険医協会

政策部長 森 壽生


 今次診療報酬改定で、高血圧などの医療を評価した特定疾患療養管理料をはじめ21項目の指導料・管理料等について、突如、「自院、他院を問わず」1患者について1医療機関のみの算定とされた。これにより、複数の疾患を抱える患者が複数の医療機関で治療をする場合、1つの医療機関のみが指導料・管理料等を算定、それ以外の医療機関はこれらを算定できず「無報酬」で指導・管理等をすることとされた。これは、患者の「主病」はひとつのみ、よって主病の指導・管理は1医療機関のみとの考え方に明らかに基づいており、医療現場、医療実態を完全に無視している。しかもこの改定内容は中医協で全く議論もなく、突然、導入された、いわば暴挙である。われわれは、現物給付とフリーアクセスを崩す、この指導料等の1医療機関算定ルールの即時撤回を強く求めるものである。

 

 今回、医療課長通知で、特定疾患療養管理料、ウィルス疾患指導料、小児特定疾患カウンセリング料、小児科療養指導料、てんかん指導料、難病外来指導管理料、皮膚科特定疾患指導管理料、慢性疼痛疾患管理料、小児悪性腫瘍患者指導管理料、在宅療養指導管理料(注射療法3項目、泌尿器系3項目、呼吸器系3項目、その他2項目)、心身療法の21項目について「自院、他院を問わず」同一月に重複して算定できないとされた。これまでは自院のみの規定であり、他院までは及んでいなかった。

 

 この変更により、これまでは糖尿病と高血圧のある患者が専門のA医療機関とB医療機関で治療をする場合、A、B各々が特定疾患療養管料2,250円を算定できていたものが、これからはどちらか1つの医療機関での算定となる。必然、片方は無報酬で疾病の療養管理を強いられることとなり、事実上、治療ができないことになる。特定疾患療養管理料が対象とする疾病は、ガン、甲状腺障害、不整脈、虚血性心疾患、肺気腫、胃潰瘍、慢性ウィルス肝炎、思春期早発症など、広範囲に及ぶ。

 今回の変更内容により、複数疾病を持っている患者は、ひと月に必要な指導・管理は1医療機関でのみしか受けられなくなり、おのずと治療する医療機関が1つに収斂していく。

 つまり、患者の「主病」は一つのみ、それを管理・指導する医療機関は一つのみ、このルールが導入されたのである。

 

 これは内科系疾患だけに留まらない。糖尿病でインスリンの自己注射の指導管理を糖尿病クリニックで行い、変形性膝関節症の疼痛管理を整形外科で行い、帯状疱疹の指導管理を皮膚科で行っている患者の場合、これまで各々の医療機関が、在宅自己注射指導管理料8,200円、慢性疼痛疾患管理料1,300円、皮膚科特定疾患指導管理料1,000円を算定していたが、これからはいずれかの医療機関でのみの算定となる。患者は主病を決めようにも決められない事態に陥ることになる。

 このような医療実態とかけ離れた、改定内容がこっそりと導入されたのである。

 

 重複し算定した場合は、医療費請求により医療保険者の手許で把握され、調整・是正が審査支払い機関を通じて医療機関になされ、現場混乱を引き起こすことは火を見るより明らかである。

 これらは、疾病の際に必要な医療を保障するという医療保険の、「現物給付」の原則に大きく反している。また「いつでも、どこでも、だれでも」受診できるフリーアクセスの否定でもある。

 いわば、事実上の登録医制の導入、その布石である。しかもイギリスとは違い、専門医への振り分け機能を期待されていない、自己完結型の現場実態無視の制度である。

 

 その上に、更に問題がある。4月実施の後期高齢医療制度に伴い、包括報酬の後期高齢者診療料6,000円が導入されたが、これは問題の指導料・管理料等含んだ報酬となっており、問題のこのルールが適用となる。A医療機関で包括報酬を算定し、B医療機関で特定疾患療養管理料を算定している場合に、片方が算定できなくなる。保険者である広域連合は、どちらに優先権を与えるかは「検討中」としているが、包括報酬の「後期高齢者診療料」は全身的医学管理、総合的な治療管理を評価した点数と定義されているため、こちらが優位となると見られる。

 よって、当初、採算割れで不評であったこの包括報酬を、医療機関は治療上、算定せざる得ず、算定できない医療機関は極端に低い報酬での治療となる。必然、包括報酬による患者の囲い込み合戦に否が応でも医療機関は巻き込まれていくことになる。

 しかも、包括報酬でさえも、処置・検査・レントゲンをも含んだ設定とされたため、現状からみても低い水準である。つまり、「超」低医療政策を高齢者医療に敷いたのであり、高齢者医療イコール症状安定医療との無理解による、高齢者医療の軽視施策が体制づけられ、確立させられることとなる。

 包括報酬と特定疾患療養管理料のバッティングの医療機関相互での調整や、高齢者患者の混乱、粗診粗療の懸念など、非常に問題を孕む中、事態が進行していくという不幸が始まるのである。

 

 われわれは、高齢者医療の無理解にもとづく、この後期高齢者診療料は現場の8割が反対をしており、混乱と不幸を招来すると示し、この点数を採用しないよう医療機関、国民に広く理事会として2月28日に呼びかけた。3月5日に出された、問題のルールを盛り込んだ課長通知は、これへの対抗措置の感が強い。

 

 登録医制導入の策動は、「主治医」の名称を潜行させ、1医療機関のみに報酬算定を限定する、実質型に戦略が確実に変わってきている。

 

 今次改定は、このほかジェネリックの投薬・注射での第一選択化を狙った療養担当規則の変更、外来管理加算5分ルールによる患者数制限が行われた。これらは90年代に厚生省が海外視察で学んだイギリスの登録医制の敷設、フランスの薬剤の参照価格制(ジェネリック価格を超える先発品価格の自費制度)の環境整備、ドイツの医師定数制の逆バージョンでの導入である。

 

 今次診療報酬改定は日本の医療の特性である、フリーアクセス、現物給付、プロフェッショナルフリーダム、皆保険への真っ向からの挑戦である。

 

 この管理料・指導料1医療機関のみルール(主病ルール)は、財政試算も全く示されず、国民的な了解も何もなされないまま、突然、導入され4月から実施されようとしている。医療崩壊は更に、決定的になる。既に、患者・国民からは、複数医療機関の受診を制限する後期高齢者診療料は「おかしい」との批判の声がマスコミに投書されている。厚労省は真摯にこれらに耳を傾け、厚労行政のあり方を見直すべきである。

 

 われわれは、この強引な手法による制度変更の、即時撤回を断固求めるものである。

2008年3月19日