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2010/2/3 医療運動部会長談話「外来管理加算『5分ルール』の精算、2,000億円補填が道理」

外来管理加算「5分ルール」の精算、

2,000億円補填が道理

神奈川県保険医協会

医療運動部会長  野本 哲夫


 診療報酬改定を巡り、プラス改定の「偽装」が一般マスコミで報じられ、実質0%改定が公になっている。この下で、2月12日の中医協での答申に向け、現在、個別項目への点数貼り付け作業が行なわれている。依然、診療所の再診料引き下げや大胆な配分見直しが議論の俎上に上っており、これに異を唱えるともに、この2年間の外来管理加算「5分ルール」の過誤精算をすることを強く求める。

 

 今次改定率は公称+0.19%で決着したが、「なお、別途、後発品の置き換え効果の精算を行う」とされ、薬の「後発品のある先発品の追加引下げ」で捻出された600億円を、後発品使用が進んでいないことを理由に財務省が改定財源から外したのである。

 

 一方、前回改定で導入され大問題となった外来管理加算「5分ルール」は、結果的に年間1,200億円減(「平成20年社会診療行為別調査」)と、当初予定の200億円減とのギャップが1,000億円にもなったことが確定している。

 

 この5分ルールは診療所から病院への財源移転の方策として導入された。しかし、診療所のみならず中小病院(199床以下)も外来管理加算を算定するため、経営基盤を大きく崩す打撃を与えている。

 丁寧な診療の指標として導入された「5分」は、迅速な判断が優先する急性症状の診療では意味もなく、中医協の改定検証部会の調査結果でも、患者から不評であり、今回の廃止へと至っている。いわば施策の失敗である。

 

 今回の薬価引下げ600億円の財源外しに関し厚労省は、前回改定から実施した改定率の枠外での「後発品の使用促進」による医療費削減と同等扱いと嘯(うそぶい)ているが、この「追加引下げ分」は薬価改定で従来、処理されてきたのである。

 600億円の改定財源外しは、後発品使用促進という国の施策の失敗にもかかわらず、それを理由に「精算」という新たな手法を導入したのである。

 そうであれば、「5分ルール」も別枠で、後発品使用と同列に「精算」をするのが当然である。年間1,000億円の2年分、つまり2,000億円を財務省は過誤精算し、医療費予算を補填計上すべきである。

 その上で、今次改定では外来管理加算の算定要件は、無条件で完全に元に戻し、そのために要する改定財源は、予算の組み替えないしは補正予算で手当てをすべきである。

 

 苦境に立つ中小病院の再診料600円は引き上げて、ともに第一線医療を担う診療所710円と統一すべきであり、大病院の再診料である「外来診療料」700円が目安となる。

 大胆な配分は、診療所と病院の医療費配分の見直しの文脈で語られているが、実際は医科の医療費の67.5%を病院が占めている。32.5%の医療費で診療所は全国の外来患者の7割を診ており、この医療費を大胆に圧縮したら、第一線医療は疲弊し、中核病院が担う二次救急は確実に破綻する。

 

 医療再建に向け、道理と見識ある診療報酬改定と、財源問題を正面から問う政策論争を強く望む。

2010年2月3

 

外来管理加算「5分ルール」の精算、

2,000億円補填が道理

神奈川県保険医協会

医療運動部会長  野本 哲夫


 診療報酬改定を巡り、プラス改定の「偽装」が一般マスコミで報じられ、実質0%改定が公になっている。この下で、2月12日の中医協での答申に向け、現在、個別項目への点数貼り付け作業が行なわれている。依然、診療所の再診料引き下げや大胆な配分見直しが議論の俎上に上っており、これに異を唱えるともに、この2年間の外来管理加算「5分ルール」の過誤精算をすることを強く求める。

 

 今次改定率は公称+0.19%で決着したが、「なお、別途、後発品の置き換え効果の精算を行う」とされ、薬の「後発品のある先発品の追加引下げ」で捻出された600億円を、後発品使用が進んでいないことを理由に財務省が改定財源から外したのである。

 

 一方、前回改定で導入され大問題となった外来管理加算「5分ルール」は、結果的に年間1,200億円減(「平成20年社会診療行為別調査」)と、当初予定の200億円減とのギャップが1,000億円にもなったことが確定している。

 

 この5分ルールは診療所から病院への財源移転の方策として導入された。しかし、診療所のみならず中小病院(199床以下)も外来管理加算を算定するため、経営基盤を大きく崩す打撃を与えている。

 丁寧な診療の指標として導入された「5分」は、迅速な判断が優先する急性症状の診療では意味もなく、中医協の改定検証部会の調査結果でも、患者から不評であり、今回の廃止へと至っている。いわば施策の失敗である。

 

 今回の薬価引下げ600億円の財源外しに関し厚労省は、前回改定から実施した改定率の枠外での「後発品の使用促進」による医療費削減と同等扱いと嘯(うそぶい)ているが、この「追加引下げ分」は薬価改定で従来、処理されてきたのである。

 600億円の改定財源外しは、後発品使用促進という国の施策の失敗にもかかわらず、それを理由に「精算」という新たな手法を導入したのである。

 そうであれば、「5分ルール」も別枠で、後発品使用と同列に「精算」をするのが当然である。年間1,000億円の2年分、つまり2,000億円を財務省は過誤精算し、医療費予算を補填計上すべきである。

 その上で、今次改定では外来管理加算の算定要件は、無条件で完全に元に戻し、そのために要する改定財源は、予算の組み替えないしは補正予算で手当てをすべきである。

 

 苦境に立つ中小病院の再診料600円は引き上げて、ともに第一線医療を担う診療所710円と統一すべきであり、大病院の再診料である「外来診療料」700円が目安となる。

 大胆な配分は、診療所と病院の医療費配分の見直しの文脈で語られているが、実際は医科の医療費の67.5%を病院が占めている。32.5%の医療費で診療所は全国の外来患者の7割を診ており、この医療費を大胆に圧縮したら、第一線医療は疲弊し、中核病院が担う二次救急は確実に破綻する。

 

 医療再建に向け、道理と見識ある診療報酬改定と、財源問題を正面から問う政策論争を強く望む。

2010年2月3