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2010/1/21 政策部長談話「実質マイナス改定の懸念に警鐘 診療報酬の改定率の検証を求める」

実質マイナス改定の懸念に警鐘

診療報酬の改定率の検証を求める

神奈川県保険医協会

政策部長 桑島 政臣


 次期診療報酬の改定率は、全体+0.19(本体+1.55%、薬価・材料▲1.36%)と公表されているが、年明けの専門誌数社の報道で、薬価引き下げ財源を本体に全て振り替えず、その一部を財務省が中抜きし改定財源から外したことが、次々と明らかになっている。また、執拗な診療所の再診料引き下げの策動は、そこで浮く財源の行き場が不明で、結果的なマイナス改定の企図さえ懸念されている。前回改定からはじまった、改定率以外の医療費操作を指摘し是正を求めとるともに、改定率について事後検証を中医協に要望する。

 中医協の「診療報酬改定結果検証部会」は、改定項目個々の影響について検証を行っているが、改定率が及ぼした医療費への影響と結果については検証がなされていない。そもそも診療報酬改定率は対前年の医療費に対する数値である。これに高齢化、技術進歩、受診日数などの要因が重なり合って医療費の伸びとなる。昨今は高齢化が伸び率の主因であり、この10年間は診療報酬のマイナス改定により伸び率を下方修正させていたのである。

 前回改定は、全体▲0.82%(本体+0.38%、薬価等▲1.2%)が公称数字だったが、後発医薬品使用促進による▲220億円(医療費ベース▲0.28%)を織り込んで予算付けがされた。つまり、▲1.1%が正味の改定率であり、当初予算は+2.6%(対前年度)の伸び率とされた。本来+3.7%の伸び率だったものを▲1.1%下げたのである。

 しかし、結果は外来管理加算の影響額の見込み違い(乖離540億円)もあり、伸び率は+1.9%(「医療費の動向」)となっており、0.7ポイント、▲2300億円と大幅に乖離している。諸要因が影響するが、最終的に▲1.8%程度と、当初の倍近いマイナス改定となっている。

 この低くなった医療費を土台にし、上方修正はされずに改定率が決定されている。10年度の医療費予算(国庫負担)の伸び率は+4.6%であり、公表されている09年の4-8月の伸び率4.0%を勘案すれば、改定率+0.19%を加味した相当な数字となっている。

 ただ、先に触れたように、今次改定は薬価引き下げ▲5100億円(医療費ベース▲1.39%)分を本体に全て振り向けず、「後発品のある先発品の追加引き下げ」で捻出された▲600億円(▲0.16%)分は、これまで後発品使用が進んでいない分の「清算」とされ、財務省に中抜きされたのである。

 つまり、薬価改定率の本当の数字は▲1.39%であり、材料が▲0.13%なので合計は▲1.52%。本体+1.55%と相殺すると、全体で+0.03%(+100億円)となり、極少、いわば実質ゼロとなっている。

 この下、財務省筋から診療所の再診料引き下げ、病診統一が再三、働きかけられており、これで浮く財源▲380億円~▲500億円の行き場が不明で、実質マイナス改定に転じる危険性すらある。

 このような見かけ上の改定率と裏技による実質的な改定率のダブルスタンダードは改善し、改定率の妥当性についても、決算時に中医協できちんと検証すべきである。そのことを強く要望する。 

2010年1月21日

 

実質マイナス改定の懸念に警鐘

診療報酬の改定率の検証を求める

神奈川県保険医協会

政策部長 桑島 政臣


 次期診療報酬の改定率は、全体+0.19(本体+1.55%、薬価・材料▲1.36%)と公表されているが、年明けの専門誌数社の報道で、薬価引き下げ財源を本体に全て振り替えず、その一部を財務省が中抜きし改定財源から外したことが、次々と明らかになっている。また、執拗な診療所の再診料引き下げの策動は、そこで浮く財源の行き場が不明で、結果的なマイナス改定の企図さえ懸念されている。前回改定からはじまった、改定率以外の医療費操作を指摘し是正を求めとるともに、改定率について事後検証を中医協に要望する。

 中医協の「診療報酬改定結果検証部会」は、改定項目個々の影響について検証を行っているが、改定率が及ぼした医療費への影響と結果については検証がなされていない。そもそも診療報酬改定率は対前年の医療費に対する数値である。これに高齢化、技術進歩、受診日数などの要因が重なり合って医療費の伸びとなる。昨今は高齢化が伸び率の主因であり、この10年間は診療報酬のマイナス改定により伸び率を下方修正させていたのである。

 前回改定は、全体▲0.82%(本体+0.38%、薬価等▲1.2%)が公称数字だったが、後発医薬品使用促進による▲220億円(医療費ベース▲0.28%)を織り込んで予算付けがされた。つまり、▲1.1%が正味の改定率であり、当初予算は+2.6%(対前年度)の伸び率とされた。本来+3.7%の伸び率だったものを▲1.1%下げたのである。

 しかし、結果は外来管理加算の影響額の見込み違い(乖離540億円)もあり、伸び率は+1.9%(「医療費の動向」)となっており、0.7ポイント、▲2300億円と大幅に乖離している。諸要因が影響するが、最終的に▲1.8%程度と、当初の倍近いマイナス改定となっている。

 この低くなった医療費を土台にし、上方修正はされずに改定率が決定されている。10年度の医療費予算(国庫負担)の伸び率は+4.6%であり、公表されている09年の4-8月の伸び率4.0%を勘案すれば、改定率+0.19%を加味した相当な数字となっている。

 ただ、先に触れたように、今次改定は薬価引き下げ▲5100億円(医療費ベース▲1.39%)分を本体に全て振り向けず、「後発品のある先発品の追加引き下げ」で捻出された▲600億円(▲0.16%)分は、これまで後発品使用が進んでいない分の「清算」とされ、財務省に中抜きされたのである。

 つまり、薬価改定率の本当の数字は▲1.39%であり、材料が▲0.13%なので合計は▲1.52%。本体+1.55%と相殺すると、全体で+0.03%(+100億円)となり、極少、いわば実質ゼロとなっている。

 この下、財務省筋から診療所の再診料引き下げ、病診統一が再三、働きかけられており、これで浮く財源▲380億円~▲500億円の行き場が不明で、実質マイナス改定に転じる危険性すらある。

 このような見かけ上の改定率と裏技による実質的な改定率のダブルスタンダードは改善し、改定率の妥当性についても、決算時に中医協できちんと検証すべきである。そのことを強く要望する。 

2010年1月21日