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2008/2/21 歯科部会長談話「今次改定 保険医の『裁量権』侵害」

今次改定 保険医の「裁量権」侵害

 

神奈川県保険医協会

歯科部会長  馬場 一郎


 厚労省の諮問を受け、2月13日に中医協が答申を行った。答申を見る限り今次歯科改定の狙いは、「歯科疾患管理料」新設による強引な患者長期管理への誘導、点数包括化による2011年「レセプトオンライン請求義務化」へ向けた道筋作り―ということが透けて見える。今次改定は、歯科保険診療の選択肢を狭める、すなわち「歯科保険医の裁量権の侵害」に直結すると言わざるを得ない。

 我々歯科保険医は患者の口腔内の状況・疾患に応じて治療計画を立て、個々の患者に対する治療や指導を行う。一口腔単位で患者の口腔内を管理することは重要であるが、例えば「歯周病」と「う蝕」では治療内容も管理方法も全く異なる。それにも関わらず、一律に「歯科疾患管理料」へ一本化する今回の改定は、歯科医療現場の実態を無視したものと言える。

 

 今次改定では初・再診料や処置・手術・歯冠修復の点数などが若干引き上がり、新技術も保険導入されるのはほぼ確実なものとなっている。しかし初・再診料引き上げの財源はラバー加算と歯肉息肉除去術を廃止した分で充当されていることが伺える。基本診療料引き上げ分に特掲診療料の廃止分を充てるようなやり方は、本末転倒と言わざるを得ない。

 さらに、患者管理の「入り口」となる「歯科疾患管理料」の算定要件が現状の「歯科疾患総合指導料」のような―実態にそぐわない無理難題を押し付けるような―ものでは、とても容認できるものではない。「歯科疾患管理料」の算定要件が厳しければ、「歯科疾患総合指導料」同様、算定そのものが極めて困難になるし、算定できたとしても、その後の治療・管理において何らかの制限が加わる可能性も否定できない。

 

 また、忘れてはならないのが、改訂された「歯周病治療」「有床義歯」の両ガイドラインが今次改定に反映されていることである。答申では、歯周病メインテナンスは最長3年間、有床義歯の長期管理は最長1年間となっている。この「期間」と「歯科疾患管理料」の算定要件がどう絡んでくるのかも今次改定内容を左右するだろう。

 

 改めて説明するまでもなく、過去3回のマイナス改定で、歯科保険医療機関の経営は厳しく、すでに限界を超えている。追い討ちをかけるように今次改定も実質マイナス改定(▲0.82%)となっており、4回連続マイナス改定で、さらなる歯科医療崩壊が加速しかねない。歯科保険医として今次改定も到底受け入れられるものではない。

 今次改定に限らず、これまでの歯科診療報酬体系は「国民の視点」に立っていなかった。本来医療とは国民のためのものだ。よって、政府が推し進めている「社会保障費縮減」という名目の医療費削減を断じて許すことはできない。

 

 今回の中医協答申で、今次改定の全てが明らかになったわけではない。しかし、歯科保険医にとって、厳しい改定内容になることはほぼ間違いない。改定直後は大幅な収入ダウンにはならなくても、治療が長期に渡った場合には、様々な制限が加わり、急激に収入がマイナスに転じる―ということも予想される。

 今後は、3月上旬に出される告示・通知を踏まえ、歯科部会として改善要求を行い、歯科診療報酬体系を患者の視点に立った本来の「あるべき姿」に戻す運動を展開していきたいと考えている。

2008年2月21日

 

今次改定 保険医の「裁量権」侵害

 

神奈川県保険医協会

歯科部会長  馬場 一郎


 厚労省の諮問を受け、2月13日に中医協が答申を行った。答申を見る限り今次歯科改定の狙いは、「歯科疾患管理料」新設による強引な患者長期管理への誘導、点数包括化による2011年「レセプトオンライン請求義務化」へ向けた道筋作り―ということが透けて見える。今次改定は、歯科保険診療の選択肢を狭める、すなわち「歯科保険医の裁量権の侵害」に直結すると言わざるを得ない。

 我々歯科保険医は患者の口腔内の状況・疾患に応じて治療計画を立て、個々の患者に対する治療や指導を行う。一口腔単位で患者の口腔内を管理することは重要であるが、例えば「歯周病」と「う蝕」では治療内容も管理方法も全く異なる。それにも関わらず、一律に「歯科疾患管理料」へ一本化する今回の改定は、歯科医療現場の実態を無視したものと言える。

 

 今次改定では初・再診料や処置・手術・歯冠修復の点数などが若干引き上がり、新技術も保険導入されるのはほぼ確実なものとなっている。しかし初・再診料引き上げの財源はラバー加算と歯肉息肉除去術を廃止した分で充当されていることが伺える。基本診療料引き上げ分に特掲診療料の廃止分を充てるようなやり方は、本末転倒と言わざるを得ない。

 さらに、患者管理の「入り口」となる「歯科疾患管理料」の算定要件が現状の「歯科疾患総合指導料」のような―実態にそぐわない無理難題を押し付けるような―ものでは、とても容認できるものではない。「歯科疾患管理料」の算定要件が厳しければ、「歯科疾患総合指導料」同様、算定そのものが極めて困難になるし、算定できたとしても、その後の治療・管理において何らかの制限が加わる可能性も否定できない。

 

 また、忘れてはならないのが、改訂された「歯周病治療」「有床義歯」の両ガイドラインが今次改定に反映されていることである。答申では、歯周病メインテナンスは最長3年間、有床義歯の長期管理は最長1年間となっている。この「期間」と「歯科疾患管理料」の算定要件がどう絡んでくるのかも今次改定内容を左右するだろう。

 

 改めて説明するまでもなく、過去3回のマイナス改定で、歯科保険医療機関の経営は厳しく、すでに限界を超えている。追い討ちをかけるように今次改定も実質マイナス改定(▲0.82%)となっており、4回連続マイナス改定で、さらなる歯科医療崩壊が加速しかねない。歯科保険医として今次改定も到底受け入れられるものではない。

 今次改定に限らず、これまでの歯科診療報酬体系は「国民の視点」に立っていなかった。本来医療とは国民のためのものだ。よって、政府が推し進めている「社会保障費縮減」という名目の医療費削減を断じて許すことはできない。

 

 今回の中医協答申で、今次改定の全てが明らかになったわけではない。しかし、歯科保険医にとって、厳しい改定内容になることはほぼ間違いない。改定直後は大幅な収入ダウンにはならなくても、治療が長期に渡った場合には、様々な制限が加わり、急激に収入がマイナスに転じる―ということも予想される。

 今後は、3月上旬に出される告示・通知を踏まえ、歯科部会として改善要求を行い、歯科診療報酬体系を患者の視点に立った本来の「あるべき姿」に戻す運動を展開していきたいと考えている。

2008年2月21日