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政策部長談話 「道理のない、再診料引き下げの撤回を求める」

 道理のない、再診料引き下げの撤回を求める

 

神奈川県保険医協会

政策部長  森 壽生


 中医協は「診療所の再診料の引き下げ」が焦点とされ、"引き下げ3~4点の攻防"と観測が出始めている。病診の点数格差が患者集中の温床との事実無根の言説や、開業医収入優遇との荒唐無稽な一連の情報操作による、この再診料引き下げ策動に断固抗議するとともに、撤回を強く求める。

 

 今、勤務医対策1,500億円の捻出のため、診療報酬本体プラス分1,100億円の全てをあて、不足分400億円を診療所の再診料で補う方向で、現在、中医協で調整が進んでいる。

 しかし、そもそも今日の病院の医師不足、病院崩壊の根源は、97年の医学部定員削減の閣議決定と80年代から続く極端な低医療費政策にあり、過熱する医療事故報道と臨床研修の必修義務化により、顕在化したものである。つまり、厚労省の失政が招いた事態である。

 

 しかも、第一線医療も実質5期10年に及ぶ、診療報酬のマイナス改定の連続により、診療所の産科・外科の減少にとどまらず、疲弊感・徒労感の空気が広がっている。「若い人は医者になんかならない方がいい」との声が現場で既に出ている。未来を感じられないのである。決定した次期改定率▲0.82%は大きな影をおとしており、これに再診料の引き下げが重なれば、医療現場の士気は確実に挫かれる。

 

 患者1人あたり医療費は診療所外来で、この間14,141円(98年)が11,151円(06年)と▲21.2%と激減し、病院外来の▲7.9%<16,086円(98年)が14,821円(06年)>以上に深刻な数字となっている(「社会医療診療行為別調査」)。

 第一線医療の診療所において「初診・再診料」、「医学管理料」、つまり診察・診断・管理の無形技術が医療費に占める比重は36%であり、病院の15%に比べて非常に大きい。それは、役割と機能によるものである。

 また、再診料は矛盾に満ちた点数である。再診時に新たな疾病を発見し、診察・診断をしても初診料の2,700円は算定できず、710円である。同時に複数発見しても710円である。しかもこの料金には、外来看護費用や光熱水費、施設維持管理費用を含んだ料金なのである。この不合理は全く報道されていない。

 この下での、診療所の再診料の引き下げは、「愚策」そのものである。前回の改定では診療所は初診料40円、再診料20円が引き下げられている。

 先に見たように、診療所も病院も、この間の累積改定率▲6.6%以上に患者医療費は抑制されており、改定率の数字的検証もないまま推移してきている。

 これらのことは、医学・医療の進歩の下、激減したこの医療費で患者が治療を受けていることを意味する。無理が生じるのは当然である。あるべきは、病院・診療所の再診料の引き上げである。

 

 しかし、これに輪をかけて、容態が安定しているとし、老人患者の再診料を一般患者より引き下げることも俎上に上っている。

 反論するが老人患者は全て慢性疾患ではない。ガンの6割は65歳以上であり、その半分は75歳以上が占める。また脳血管障害の8割は65歳以上であり、その7割が75歳以上である(医療費ベース)。しかも、老人は急変、急性症状を繰り返しやすく、老人の診察・診断は難しいのである。虫垂炎の穿孔は診断に1週間を要することもある。決して、再診料は下げるべきではない。

 

 開業医の年収2,500万円、勤務医1,400万円と報じ、再診料の格差是正の口実とされてきているが、この数字は医療法人の診療所院長と公立病院勤務医の数字である。医療法人の診療所院長は年収2,500万円、診療所勤務医1,400万円、病院院長(全体)2,600万円、病院勤務医1,400万円(「中医協医療経済実態調査」)であり、比較の対象がそもそもおかしい。

 また診療報酬はイコール医師収入ではなく、医療機関の事業所収入である。更には収入の多寡により、勤務医の多くが開業医に転進しているのではない。交代勤務できない劣悪な労働環境が問題なのである。

 

 いたずらに開業医と勤務医を分断する世論誘導や、第一線医療への失政のツケ回しは、より深刻な問題へ発展する。

 鳥インフルエンザの感染爆発(パンデミック)の発生や、大地震・大災害の際の医療には、第一線医療の果たす役割が極めて重要である。しかし、士気を挫かれた医療現場は高い致死率を省みずに職命感を発揮できるだろうか。医療、社会保障は国の安全保障でもある。

 

 過ちは改めるに如かず。勤務医対策は抜本的な補正予算を組んで対応し、現場に光明を与える改定とするよう強く要望する。

2008年1月29日