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2012/6/25 政策部長談話「複雑怪奇な、医療の消費税が『非課税』?ホントは『被課税』です 患者、病院ともにスッキリ消費税の『負担なし』に」

複雑怪奇な、医療の消費税が「非課税」? ホントは「被課税」です

患者、病院ともにスッキリ消費税の「負担なし」に

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 一体改革の数字がおかしい。消費税率5%の引き上げは税収1%が純粋な社会保障の充実にあてられ、残りの3%は財政健全化分、つまりは従来の国庫財源との差し替え、1%が税率アップに伴う社会保障支出の増加とされていた。しかしこの1%(2.7兆円)は今年から岡田副総理により0.8兆円となっている。当会の照会に内閣府は1.9兆円の減額幅は効率化努力により捻出するとした。この捻出が実行可能であるなら、医療の消費税の矛盾を早期に解消することをわれわれは強く求める。

 

 医療は消費税が非課税となっている。これは公的保険の医療への対価(診療報酬)に消費税が非課税ということである。この非課税は医療界が求めたとされている。

 消費税の取り扱いは、非課税、不課税、免税 課税とある。課税以外は、一般の多くはこの違いをほとんど分からない。ましてや導入時にこの相違を理解していたのはほんの一握りである。

 

 医療は患者と医療機関の間で成り立っている。消費税の導入の際、医療は「非課税」とされた。「非課税」の言葉の響きは、患者にも医療機関にも、消費税の負担が「非ず(あらず)」だと、誰もが当初、理解していた。患者の治療費は勿論、医療機関の仕入れる医薬品、治療材料、医療機器の消費税の負担がないことが、医療が非課税である。これが医療界の求めた「趣旨」である。

 しかし、実際は違ったのである。消費税法は、患者の治療費と医療保険から医療機関への支払いを非課税とし、医療機関の仕入れを非課税としなかったのである。

 通常の事業は課税なので、価格転嫁という方法を使い、消費者が払う代金に消費税を盛り込んで負担させ、事業者が仕入れで負担した消費税と相殺し税務署に納税している。つまり医療機関は価格転嫁ができないどころか、納入価格で負担した消費税を相殺する根拠もない。ただただ、消費税を負担し続け、病院では年間数億円単位に上る。この相殺不可能な消費税負担を、「損税」あるいは「控除対象外消費税」と呼んでいる。

 税制の仕組みは複雑で難しい。「税率0%」、これが矛盾を解く呪文であり、国会議員も財務省も医療関係者の誰もが知っている。過去の経緯が邪魔をし、踏み切れていないだけである。このゼロ税率により、課税しても価格転嫁は0円、仕入れとの相殺も根拠をもち、その結果、損税分が還付となる。

 

 一体改革は、社会保障の充実をうたっているが医療崩壊となっては元の木阿弥だ。損税は診療報酬全体の2%相当、約6,000億円である。現行税率5%が10%となれば、1.2兆円に膨らむ。すでに損益分岐点が病院、診療所とも95%前後と危険水域にありギリギリの経営を多くが強いられている。消費税10%段階では社会保障全体は2.7兆円増えるが、これは充実3.8兆円マイナス効率化1.2兆円の結果であり、医療だけは▲1.2兆円と大鉈が振り下ろされる計画となっている。地域医療は風前の灯だ。

 

 消費税対応で補填された診療報酬1.53%(技術料0.43%、薬価1.1%)は偏在配点であり補填幅も損税分2%に満たず、しかも既に補填した点数は雲散霧消している。初診料・再診料への補填が道理である。これとて矛盾を糊塗した弥縫策でしかない。ゼロ税率の実現が喫緊であり、冒頭に指摘した1.9兆円は、ここに回すべきである。角を矯めて牛を殺す、そんな改革は御免である。

 

2012年6月25日

 

複雑怪奇な、医療の消費税が「非課税」? ホントは「被課税」です

患者、病院ともにスッキリ消費税の「負担なし」に

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 一体改革の数字がおかしい。消費税率5%の引き上げは税収1%が純粋な社会保障の充実にあてられ、残りの3%は財政健全化分、つまりは従来の国庫財源との差し替え、1%が税率アップに伴う社会保障支出の増加とされていた。しかしこの1%(2.7兆円)は今年から岡田副総理により0.8兆円となっている。当会の照会に内閣府は1.9兆円の減額幅は効率化努力により捻出するとした。この捻出が実行可能であるなら、医療の消費税の矛盾を早期に解消することをわれわれは強く求める。

 

 医療は消費税が非課税となっている。これは公的保険の医療への対価(診療報酬)に消費税が非課税ということである。この非課税は医療界が求めたとされている。

 消費税の取り扱いは、非課税、不課税、免税 課税とある。課税以外は、一般の多くはこの違いをほとんど分からない。ましてや導入時にこの相違を理解していたのはほんの一握りである。

 

 医療は患者と医療機関の間で成り立っている。消費税の導入の際、医療は「非課税」とされた。「非課税」の言葉の響きは、患者にも医療機関にも、消費税の負担が「非ず(あらず)」だと、誰もが当初、理解していた。患者の治療費は勿論、医療機関の仕入れる医薬品、治療材料、医療機器の消費税の負担がないことが、医療が非課税である。これが医療界の求めた「趣旨」である。

 しかし、実際は違ったのである。消費税法は、患者の治療費と医療保険から医療機関への支払いを非課税とし、医療機関の仕入れを非課税としなかったのである。

 通常の事業は課税なので、価格転嫁という方法を使い、消費者が払う代金に消費税を盛り込んで負担させ、事業者が仕入れで負担した消費税と相殺し税務署に納税している。つまり医療機関は価格転嫁ができないどころか、納入価格で負担した消費税を相殺する根拠もない。ただただ、消費税を負担し続け、病院では年間数億円単位に上る。この相殺不可能な消費税負担を、「損税」あるいは「控除対象外消費税」と呼んでいる。

 税制の仕組みは複雑で難しい。「税率0%」、これが矛盾を解く呪文であり、国会議員も財務省も医療関係者の誰もが知っている。過去の経緯が邪魔をし、踏み切れていないだけである。このゼロ税率により、課税しても価格転嫁は0円、仕入れとの相殺も根拠をもち、その結果、損税分が還付となる。

 

 一体改革は、社会保障の充実をうたっているが医療崩壊となっては元の木阿弥だ。損税は診療報酬全体の2%相当、約6,000億円である。現行税率5%が10%となれば、1.2兆円に膨らむ。すでに損益分岐点が病院、診療所とも95%前後と危険水域にありギリギリの経営を多くが強いられている。消費税10%段階では社会保障全体は2.7兆円増えるが、これは充実3.8兆円マイナス効率化1.2兆円の結果であり、医療だけは▲1.2兆円と大鉈が振り下ろされる計画となっている。地域医療は風前の灯だ。

 

 消費税対応で補填された診療報酬1.53%(技術料0.43%、薬価1.1%)は偏在配点であり補填幅も損税分2%に満たず、しかも既に補填した点数は雲散霧消している。初診料・再診料への補填が道理である。これとて矛盾を糊塗した弥縫策でしかない。ゼロ税率の実現が喫緊であり、冒頭に指摘した1.9兆円は、ここに回すべきである。角を矯めて牛を殺す、そんな改革は御免である。

 

2012年6月25日