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医療情報問題ニュース 「共通番号制のなし崩し的な導入に"STOP!"の声を届けよう!! 内閣官房、番号制大綱でパブコメ募集(〆切:8月6日)」

 政府は2011年7月7日、 「社会保障・税の共通番号制大綱」に対するパブリックコメント(パブコメ)募集を開始。8月6日までの1カ月間、広く国民の意見を求めるとしています。

 政府は国民自身の自己情報の管理・閲覧、行政の効率化、震災時の活用など、メリットだけを宣伝していますが、私たちはこの共通番号制が「医療・社会保障費の給付抑制」と「医療・社会保障の産業化」を実現するためのインフラであるばかりか、国民のプライバシー権侵害にもなる制度だと考えています。

 神奈川県保険医協会は、医療・社会保障の荒廃に繋がる共通番号制に対し、導入に反対する趣旨のパブコメを提出しました。なお、冒頭に述べた通り、パブコメの募集〆切は8月6日までです。

 ここでは、当会の考える共通番号制の問題点と、当会が提出したパブコメの全文を下記に紹介しています。ぜひご参照いただき、番号制導入をストップさせるよう、多くの方の意見提出をお願いいたします。

 

パブリックコメント募集要項

「社会保障・税番号大綱」に関する意見募集の実施について

 

共通番号制の問題点 真の狙いは「給付抑制と市場化」「国民皆保険の崩壊」

 共通番号制とは、データ化した個人の医療、介護、年金などの給付・保険料納入情報と納税情報に共通番号を付して、各情報を“名寄せ”し、国や地方自治体が当該個人情報を一元管理するというもの。その上、民間事業者の活用にも道を開くものです。

 政府は、国民自身の自己情報の管理・閲覧、行政の効率化、震災時の活用など、メリットだけを宣伝しています。特に、国や行政が個人所得や税・保険料徴収額等を正確に把握することで、的確な社会保障サービスの給付や税額控除、また各制度を横断して自己負担の総額に世帯ごとの上限額を設ける「総合合算制度」の導入を強調しています。

 

 しかし、総合合算制度の企図は玉虫色であり、政治の風向きが変わればたちまち経団連など経済界が熱望する「社会保障個人会計」に姿を変えます。「社会保障個人会計」とは、社会保障給付は負担の範囲内に制限され、はみ出た部分は民間の医療・介護サービス等が補うという、いわば「社会保障費の給付抑制と医療・社会保障の産業化」を完成させるもので、その仕組みは総合合算制度と同じものです。

 

 また、政府は共通番号制で構築する情報連携基盤を基本システムとして、「どこでもMY病院構想」や「シームレスな地域医療情報連携」などの医療IT戦略を拙速に進めています。これらデータ化・一元管理された医療・健康情報が共通番号制の給付・負担の情報に結合すれば、アメリカ型の「管理医療」が完成。医療のメニューやボリュームを負担額によって簡単に制限することが可能となります。これによって前述の「「社会保障費の給付抑制と医療・社会保障の産業化」の図式はより堅牢なものとなり、その先には「国民皆保険の崩壊」が待っています。

 

 そもそも、この共通番号制については幻想や誤解が多く、問題は山積しています。

 大綱を見る限り、抽象的な理念・導入目的や今後の発展性(可能性)などの“理想論”だけが先行し、具体的な利用方法などは不明瞭で、国民のメリットが何なのか全く分かりません。

 また、これまで政府が主張してきた「正確な所得把握が可能」という点については、高額所得者の海外投資や自営業者の所得の完全補足は不可能であり、大綱でもその点について認める記述があります。

 多くの国民が懸案する情報漏洩対策については、第三者機関の設置を掲げるだけで、事前防止の対策は皆無です。そもそも、国の個人情報保護や情報漏洩に対する意識の低さは、消えた年金情報や昨年多発した公務員の情報漏洩、データ改ざん事件などが物語っています。こうした現状で、保険料や税金の納入状況、さらには病名や治療内容など秘匿性の高い個人情報をデータ化、一元管理され、利活用されることに不安を抱く人は少なくないでしょう。

 

 このように共通番号制は多くの問題を孕んでおり、なし崩しに導入されると、医療・社会保障の荒廃、プライバシー侵害、国による過剰な国民管理が進むことになります。

 私たち神奈川県保険医協会は、こうした問題点を多くの方に知っていただき、国民的議論をしっかりと重ねた上で、共通番号制導入の是非を国民全体で検討していく必要があると考えています。今後も随時情報発信していくとともに、今秋には横浜でシンポジウムを開催する予定です。共通番号制の問題を通じて医療・社会保障の未来像や今後の日本社会の在り方など、皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。

  

 【神奈川県保険医協会が提出したパブコメの全文】 

 【意見-1】

該当箇所

P.1 「第1 はじめに」→本文10行目「今後、大綱をいわゆるパブリックコメントに付し、国民の皆様のご意見を伺い、・・・」

意見内容

 国民の意見を反映させるためにもパブリックコメントの期間を延長するとともに、パブリックコメントよりも国民が簡易に意見を述べられる仕組みを検討すべきだ。また、意見募集とあわせて、大綱の内容を国民に周知するための広報活動を強化すべきである。

理 由

 番号制の導入は国民生活に大きく関わる事項にも関わらず、パブリックコメントの期間が1カ月では短すぎる。またパブリックコメントで多くの国民意見が徴収できるとは言い難い。特にパソコンを持っていない、パソコンを使えない等、いわゆる「IT弱者」はパブリックコメントが実施されていることすら知る術がない。

 更には、現状で大綱案の内容が国民に広く知れ渡っているとは考え難い。政府は今秋の法案提出というスケジュールの遵守に躍起になり、国民への説明、理解を蔑ろにしている印象さえ受ける。

 まずは国民の意見を真意に受け止めることが、大綱にも記述されている「国民の信頼を高める」ことに繋がるものと考える。そのためにも広報活動の強化と、幅広く国民意見を集約するための方策を検討すべきである。

 【意見-2】

該当箇所

P.2 「第2 基本的な考え方」→「1.番号制度の導入の趣旨」→「(1)背景」→本文11行目~「特に、・・・・制度・運営の効率性や透明性を高めることも、国民の信頼を高める上で極めて重要である。 社会保障制度や税制に対する国民の信頼を得るには、給付や負担の公平性を実感してもらうことが重要である。・・・」

意見内容

 政府は「消えた年金問題」をはじめとする昨今の公務員による情報漏洩や情報改ざん事件に対して、国民への謝罪とともに、事件の起こった経緯、問題点、改善点など詳細に説明する責任があると考える。

理 由

 該当箇所では、社会保障・税分野の制度・運営に関する国民の信頼向上が述べられているが、番号制とは、いわば「データ化された個人情報の使い方」である。国民は制度の内容以前に、情報の使い方や情報管理のモラルの部分で、政府や公務員に不信感を抱いているのである。それは、消えた年金情報や昨年多発した公務員の情報漏洩、データ改ざん事件などの事実が物語っている。

 このような状況下では、秘匿性の高い個人情報を多岐に渡って使われることに国民が不安を抱くのは当然のことである。政府は番号制導入を検討する前に、データ化された個人情報を国や自治体が管理、利用することに対する国民の不安を払拭することが最優先課題だと考える。

 【意見-3】

該当箇所

P. 4 「(3)制度導入の目的と期待される効果」→本文7行目~「・・・IT化を通じ効率的かつ安全に情報連携を行える仕組みを国・地方で連携し協力しながら整備することにより、国民生活を支える社会的基盤を構築すること・・・」

意見内容

 該当箇所の下線部については、番号制とは異なる制度のことであり、それも検討段階のものである。国民に誤解を与えぬためにも、下線部及び下線部に係る文章は削除すべきである。

理 由

 IT戦略本部において検討中の「国民ID制度」について、番号制の情報連携基盤を流用する点など関連・共通していることは理解するが、制度及び制度に係る法律は異なるものである。

 番号制は、あくまで社会保障と税の範囲に係る制度案であり、他分野、他の制度、それも検討段階のものと混同した記述は、「番号制=国民ID制度」といった大きな誤解を国民に与えかねない。また、不正確な理解のまま制度が導入された場合、現場での無秩序な利用・運用を生み、米国や韓国と同様の不正利用が社会問題化する恐れがある。更には、2018年度を目途とした番号法の見直しの際に、「なし崩し的な利用範囲の拡大」が検討されていくのではないかと危惧を抱く。

 繰り返しになるが、番号制はあくまで社会保障と税の行政手続き上の範囲に係る制度案であり、他の制度、それも検討段階のものと混同した記述は慎むべきである。

 【意見-4】

該当箇所

P. 4 「(3)制度導入の目的と期待される効果」→本文19行目~「・・・さらに、 IT化された情報連携システムの範囲をより拡大した場合には自らの利用する医療・介護等の社会保障サービスに関する情報の入手・活用が可能になる・・・・また、個人の匿名性を確保した上で診療情報等の二次利用を行えば、 医療統計データの効率的な収集が可能となり、医学の向上にも資することとなる。

意見内容

 該当箇所の下線部については、番号制とは異なる制度のことであり、それも検討段階のものである。国民に誤解を与えぬためにも、下線部及び下線部に係る文章は削除すべきである。

理 由

 該当箇所の下線部については、先述の「国民ID制度」の他に、IT戦略本部において検討されている「どこでもMY病院構想」「シームレスな地域医療情報連携」「医療情報データベースの活用」(以下:医療IT戦略)等のことを指しているものと理解する。大綱では後述で「将来的には幅広い分野での利用も目指しつつ」としているが、前述の医療IT戦略が番号制の制度内(範囲内)の構想であるとは読み取れず、あくまで情報連携基盤を介して関連・共通した別の制度であると理解している。

 しかし、国民の多くが医療IT戦略の内容を把握しているとは考え難く、「番号制の導入によって医療・健康情報の自己管理・活用が可能となる」「自分の医療情報が目的外利用される」といった大きな誤解を国民に与えかねない。事実、一部報道や有識者の講演会等では、番号制の導入によって医療・健康情報の利活用範囲が拡大し、医学の発展、医療・健康産業の創出が期待できるといった趣旨の内容が散見される。こうした不正確な理解のまま制度が導入された場合、現場での無秩序な利用・運用を生み、米国や韓国と同様の不正利用が社会問題化する恐れがある。更には、2018年度を目途とした番号法の見直しの際に、「なし崩し的な利用範囲の拡大」が検討されていくのではないかと危惧を抱く。

 番号制は、あくまで社会保障と税の行政手続き上の範囲に係る制度案であり、他の制度、それも検討段階のものと混同した記述は慎むべきである。

 

(参考資料)

 【意見-5】

該当箇所

P.4~5 「(4)諸外国の制度」→全文

意見内容

 諸外国との比較は意味をなさず、全文削除すべきである。

理 由

 諸外国の番号制度については、歴史や文化、導入に至る経緯など、各国で事情が異なるはずであり、本文ではそうした言及が全くなされていない。また、本文中に記載されている「セクトラルモデル」など、用語の説明さえない。

 本来なら、各国の事情と日本の現状を比較した上で、番号制の導入の目的や意義、有効性の説明がなされるべきである。該当箇所の文章は言葉足らずの表現で国民を惑わすだけで、記載の必要がある内容とは言い難い。

 【意見-6】

該当箇所

P. 6 「2.番号制で何ができるのか」→「(1)よりきめ細やかな社会保障給付の実現」→「①社会保障の各制度単位ではなく家計全体をトータルに捉えて医療・介護・保育・障害に関する自己負担の合計額に上限を設定する「総合合算制度(仮称)」の導入」

意見内容

 総合合算制度(仮称)の仕組みは、経団連など経済界が提唱する「社会保障個人会計(仮称)」に他ならず、社会保障費の総額管理による公的給付の縮小、医療費抑制、医療の市場化に道開く恐れが高く、導入に反対する。

理 由

 政府は大綱、社会保障・税一体改革成案において、低所得者対策の強化策として総合合算制度(仮称)の導入を提唱しているが、これは社会保障の費用及び給付と所得を一元管理する仕組みであり、これは経済界が提唱する「社会保障個人会計(仮称)」そのものである。

 社会保障個人会計(仮称)は、2004年の経団連提言で「財産相続時における、社会保障受給額(特に年金給付)のうち本人以外が負担した社会保険料相当分と相続財産との間で調整を行う仕組みも検討すべきである」と提唱。また、2005年のNTTデータ経営研究所レポートでは、社会保障個人会計について、限度額管理(給付に一定の限度額を設定したうえで、給付が限度額を超えた場合は超過分を一定期間繰り延べたり、他制度からの余剰額を付け替えたりする)や単年度清算(年度毎に公費の回収を試み、回収出来ない場合のみ、死後、相続財産から回収)、死亡時清算(死亡時点で遺産から公費を回収する)など、公的給付の縮小、医療費抑制、医療の市場化のための“究極の社会保障費総額管理システム”として提唱されている。

 5月29日の番号制シンポジウム(東京)のフロア質疑において、峰崎内閣参与は以下のとおり発言している。

 「国家管理の一元管理への懸念という問題については余り触れられておりませんので、メリット、デメリットの最初のところなのですが、これは逆に使われることもあるのではないかと。率直に申し上げて、それは政治の問題だと思うのです。社会保障を充実させていくのか、あるいは考え方によっては小さい政府に持っていって社会保障は自立自助でいったほうがいいのだというふうに思っている人たちが政治の実権を握った場合には、そちらに行くだろう。そういう意味で言うと、それはシステムの問題ではなくて、主として我々が選んでいく政治の価値観の方向をどう選択するかというところに実は問題は帰着するのではないでしょうか

 この発言は、言い換えれば“政治の方向如何で番号制の利用方法が如何様にも変わる”と解釈できる。また、政府の議論が番号制の導入理念・目的よりも番号制“システム”の導入を優先させるという“逆転現象”が生じているとも受け取れる。

 社会保障の基本は憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」であり、いくら政権が交代しようが変わらぬ国民の重大な権利のはずである。番号制は、政治権力に濫用されない確固たる理念・目的によって検討すべき制度・システムであるべきものであり、その確固たる理念・目的が定まらない以上、番号制の導入についても反対する。

 

(参考資料)

 【意見-7】

該当箇所

P. 6~7 「2.番号制で何ができるのか」→「(1)よりきめ細やかな社会保障給付の実現」→「② 高額医療・高額介護合算制度において、自己負担限度額の上限に達した場合、国民が医療機関や介護事業者に費用を立て替えることなく、その後の医療・介護サービスを受けることができるようにすること」

意見内容

 なぜ現行の高額医療・高額介護合算制度の改修・変更によって、同様のサービスが実現できないのか。その理由を明確、詳細に説明すべきである。

理 由

 現行の高額医療・高額介護合算制度は、費用の一時立て替えの他にも受給者が医療保険、介護保険双方の保険者に申請する必要があるため、受給者に手間や負担がかかっていることは理解する。しかし大綱では、番号制でなければ上記サービスが実現しない理由が明確ではなく、説明不足の感が否めない。現行制度や関連する法律、制度の改修・変更で実現するのであれば、番号制導入に係る費用や負担、情報漏洩などのリスク等は削減できると考える。

 【意見-8】

該当箇所

P. 7 「③ 給付過誤や給付漏れ、二重給付等の防止。具体的には、以下のような把握、確認が容易になる・・・」

意見内容

 なぜ現行制度の改修・変更によって、同様の業務改善が実現できないのか。その理由を明確、詳細に説明すべきである。

理 由

 現行制度や関連する法律、制度の改修・変更で改善するのであれば、番号制導入に係る費用や負担、情報漏洩などのリスク等は削減できると考える。なぜ番号制でなければ改善できないのか、その理由が明確ではなく、説明不足の感が否めない。

 【意見-9】

該当箇所

P. 8 「(3)災害時の活用に関するもの」→「① 災害時要援護者リストの作成及び更新 要介護認定や障害等級等の情報等、 分野横断的に要援護者の情報を集約できるとともに、 各種個人情報に変更等が生じた場合にも迅速なリストの更新が可能となる。また、他市町村からの転入者が要援護者であった場合、市町村を越えての情報のやり取りが容易になる。 さらに本人同意の下、 服薬情報等もリストに掲載し、医療機関等とも連携を図ることができれば、 仮に震災等の災害が起きたときにも、避難所等への効率的な医薬品配給や医療の提供に寄与する。」

意見内容

 なぜ現行の行政事務等のシステムにおいて迅速なリストの更新が不可能なのか。番号制でなければならない説明をすべきである。また服薬情報等のリストについては、情報の分散管理の観点から番号制に掲載すべきではない。

理 由

 各種個人情報については、市町村や保険者がそれぞれ管理するものであり、制度によって更新の早さが変わるものではない。また、災害時対策については、緊急措置の分野横断的なリスト作成を「特例措置」として認めるなど、現行の制度改正や行政事務等のシステム改修によって対応が可能だと考える。

 服薬情報については、医療IT戦略の「どこでもMY病院構想」において、2013年度より「電子版お薬手帳」の交付を検討していることから、制度間における情報の重複が生じることとなる。これは大綱に後述されるシステム上の安全措置「分散管理」の観点を逸脱しているものと考える。

 3・11の東日本大震災の際には、被災地・避難所のみならず広範囲に渡る停電が起こり、インターネットをはじめとする通信インフラは壊滅状態にあった。いくら各種個人情報が電子的に保存・管理されていても、被災地(現場)において即時活用できなければ何の意味もなさない。事実、被災者への医療支援では紙の「お薬手帳」が非常に役立ったとの報告もある。

 【意見-10】

該当箇所

P. 8 「(3)災害時の活用に関するもの」→「② 災害時の本人確認 被災住民が避難所等で自己の4情報(氏名、住所、生年月日及び性別をいう。以下「基本4情報」という。)及び「番号」を告知することにより、迅速に避難者リストの作成が可能になる。」

意見内容

 なぜ現行の行政事務等のシステムにおいて迅速なリストの作成が不可能なのか。番号制でなければならない説明をすべきである。

理 由

 現行でも各市町村では住民基本台帳によってデータによる住民管理を行っており、同様のリスト作成は可能と考える。

【意見-11】

該当箇所

P. 8 「(3)災害時の活用に関するもの」→「③ 医療情報の活用 災害に伴いかかりつけの病院が被災し、個々人の医療情報が滅失する可能性がある。このため災害時における特段の措置として、保険者が保有するレセプト情報を医療機関等が「番号」を基に確認できるようにすれば、継続的、効果的な医療支援を行うことができる。

意見内容

 3・11の東日本大震災における被災者の医療支援においても、レセプト情報の活用は実施されており、番号制でなければ出来ないものではない。

理 由

 3・11の東日本大震災における被災者の医療支援において、社会保険診療報酬支払基金等の呼びかけにより、患者の調剤・医療レセプトの情報提供が行われた。対応が若干遅れた点はあったが、この教訓は今後の震災時等の対応に活かされるものであり、番号制でなければ出来ない対応ではない。

 

(参考資料)

【意見-12】

該当箇所

P. 9 「(4)自己の情報の入手や必要なお知らせ等の情報の提供に関するもの」→全文

意見内容

 自宅にパソコン等がない、パソコン等の操作に不慣れな「IT弱者」は相当数存在すると考えるべきであり、対応策を明確に示すべきである。

理 由

 大綱のP.6「(5)我が国の理念」では「低所得で資産も乏しい等、真に手を差し伸べるべき者に対して、給付を充実させるなど、社会保障をよりきめ細やかに、かつ的確に行うことが重要であり・・・」と記述されている。事実、政府が主張する「真に社会保障の受給が必要な対象者」とは、低所得者や高齢者などであり、ITの利用が困難な層と一致するものと考えるべきである。

 「IT弱者」を置き去りにすることは、番号制の理念に相反することに他ならず、情報提供やサービス受給に格差が生じる可能性が高い。

【意見-13】

該当箇所

P. 9~11 「(5)事務・手続の簡素化、負担軽減に関するもの」→「① 添付書類の削減等」→全文

意見内容

 なぜ現行制度、システム等の改修・変更によって、同様の簡素化、負担軽減が図れないのか。その理由を明確、詳細に説明すべきである。

理 由

 現行制度や関連する法律、各行政事務システムの改修・変更等で改善するのであれば、番号制導入に係る費用や負担、情報漏洩などのリスク等は削減できると考える。なぜ番号制でなければ簡素化・負担軽減が図れないのか、その理由が明確ではなく、説明不足の感が否めない。
【意見-14】

該当箇所

P. 11 「② 医療機関における保険資格の確認」→「療機関におけるオンラインでの医療保険資格の確認を可能にすることにより、 レセプトへの資格情報の転記ミスや保険者の異動情報が確認できないこと等により生じている医療費の過誤調整事務が軽減でき、医療機関・審査支払機関・保険者等における事務コストを削減できる。

意見内容

 医療機関に対し、実質的に電子化・オンライン化を強要することに他ならず、反対する。また保険者異動の係る事務手続き等の責任の所在は保険者にあり、医療機関の事務コスト削減には結び付かない。実態と法的根拠を踏まえて、正しい記載内容に変更すべきである。

理 由

 保険資格の確認をオンライン化することは、医療機関の電子化・オンライン化を強要することに他ならず、ITに対応できない医療機関を廃業に追い込むことになる。2009年には全国の開業保険医約2200名が国を相手に起こした「レセプトオンライン請求義務化撤回訴訟」は記憶に新しく、政府は番号制の導入によって同じ過ちを繰り返そうとしている。医師不足が深刻な社会問題となっている現状で、医療機関の淘汰に繋がる恐れのある制度を導入すべきではない。

 また、被保険者の保険者異動に関わる事務手続き等については、保険者にその責務があり、異動後すみやかに被保険者証の回収や脱退手続き、加入手続き事務等を行わなければならない。保険医療機関は「保険医療機関及び保険医療養担当規則 第三条」によって、患者の被保険者証で資格確認を行うことが規定されているだけであり、資格喪失等による医療費の過誤調整事務は範疇外である。しかし現状では、保険者の被保険者証の回収の遅滞等により、患者が旧被保険者証を持参して来院するケースが少なくない。その際、保険者は当該患者のレセプトを保険医療機関に “返戻”し、医療機関に過誤調整を押し付けるといった対応を行っている場合が多い。いわば保険医療機関はやらなくても良い事務処理を保険者にやらされているのが実態である。こうした現状から考えれば、過誤調整事務の軽減は保険者だけのメリットであり、医療機関のメリットは皆無である。

【意見-15】

該当箇所

P.11~ 12 「(4)本人同意の取扱い」→本文12行目~「・・・医療・介護等のサービスの内容の情報を用いることで医療・介護等のサービスの質や公衆衛生・医療水準の向上に資するとするものが含まれている。・・・医療・介護等のサービスの充実や質の向上は、国民生活の充実に直結するものであり、 番号制度の下でできる限り多くの場面で用いることができるようにすべきものである。」及び19行目~「③  難病等の医学研究等において、継続的で正しいデータの蓄積が可能となる。」「④ 地域がん登録等において患者の予後の追跡が容易となる。」

意見内容

 番号制の下で医療、健康、介護分野に関わる機微性の高い情報を取り扱うべきではない。

理 由

 該当箇所で示す「医療・介護等のサービスの質や公衆衛生・医療水準の向上」に関わる個人情報の管理及び活用等については、IT戦略本部において検討されている「どこでもMY病院構想」「シームレスな地域医療情報連携」「医療情報データベースの活用」(以下:医療IT戦略)等、及び総務省が7月19日より議論を開始した「日本版EHR事業推進委員会」などと範囲が重複するものと理解する。異なる制度間で同じ情報の収集・管理・利用を行うことは、大綱に後述されるシステム上の安全措置「分散管理」の観点を逸脱しているものと考える。

 医療・介護に関する個人情報には、個人の生命・身体・健康等に関わる極めて機微性の高い情報が含まれている。番号制はあらゆる場面での利用が想定されていること、また将来的に民間事業者への利用にまで範囲を拡大することを視野に入れていることから、機微性の高い医療・介護情報を取り扱うことは、ハッキングやなりすまし等の悪意による情報漏洩のリスクが高まるし、漏洩した際の国民の不利益は計り知れない。

 極めて機微性の高い医療・介護等の情報については、特定の法律・制度のもとで厳格なルールに則って管理・運用すべきものである。同時に、国民個々の同意を条件とすることは勿論のこと、制度導入に対する国民全体の理解が必要不可欠であり、大綱に後述される「特段の措置を定める法制の整備」では、対応として不十分だと考える。

【意見-16】

該当箇所

P. 20 「(4)本人同意の取扱い」→本文12行目~「番号制度の導入について、原則として本人同意を前提としない仕組みとする一方、前記4.(3)③への対応のとおり、「番号」の恣意的な利用を防止し国民に対してあらかじめ番号制度の活用事務について明らかにするため、「番号」を付番する事務の範囲及び情報連携を行う事務の範囲を法律又は法律の授権に基づく政省令に規定するとともに、自己情報のコントロールという観点から、情報連携を通じた個人情報のやり取りに係るアクセス記録について、マイ・ポータル上でいつでも本人が確認できる仕組みを設けることとする。その上で、機微性の高い個人情報のやり取り等あらかじめ本人の同意を得て「番号」の利用又は情報連携を行う必要がある個人情報については、その旨法律又は法律の授権に基づく政省令に記載することとする。」

意見内容

 該当箇所を見る限り、自己情報コントロール権から「同意権」「自己決定権」が欠落している。これは憲法13条で保障されるプライバシーの権利を逸脱している内容であり、全面的に再検討すべきである。

 また、個人情報の取扱いは国民の権利に大きく関わる事項であり、政省令での規定は極力避けるべきである。

理 由

 自己情報コントロール権とは、自己に関する情報を収集、保管、利用、提供するその各段階において、その目的について事前に知らされて、検討した上で、「同意権」を通じてコントロール(自己決定)する権利である。本人同意を前提としないということは、「同意権」「自己決定権」の形骸化を意味する。憲法13条で保障されるプライバシーの権利でも保障される人権の中でも中核ともいうべき重要な人権であり、いかなる制度においても侵害することは許されない。

 また、情報連携の行う範囲等について政省令で規定することは、国民の知らぬ内に重大な事項が決定されることになりかねない。個人情報の取扱いについては、国民の権利、生活に大きく関わる重大事項であり、国会の議決による法律によって定めることを原則とすべきと考える。政省令での規定は実務的な内容に限定し、委任範囲は極力最小限に止めるべきである。