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政策部長談話 「緊急!水道法改正案に反対する 公設民営化での料金高騰、外資売却の危険性を警鐘する」

緊急!水道法改正案に反対する

公設民営化での料金高騰、外資売却の危険性を警鐘する

 

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


◆ 覆水盆に返らず 諸外国に学ばぬ水道民営化は危険

 水道事業を公設民営化する水道法改正案が臨時国会(10月24日召集、12月10日閉会)で成立の危険性が高まっている。水、水道は国民の日常生活に密接にかかわり、災害時、非常時には生命維持に必須となる。勿論、日々の医療においても不可欠である。水の「安定供給」はわれわれの社会構造の大前提である。この民営化は諸外国の先例にみるように料金高騰、水質低下、水道施設整備の不安定さを招く危険が高い。われわれは、水道法改正案の成立に強く反対する。

 

◆ 運営権売却で清浄、豊富、低廉の水道事業が変質 副総理が米国研究所で「民営化」を公言

 この水道法改正案は既に先の通常国会でわずか8時間の審議で衆院を通過し、参議院で1秒も議論されずに「継続審議」となっている。この法案の大きな問題は、改正法案第24条で水道施設運営権を規定し、公に所有権を残したまま、民間企業へ運営権を長期間にわたり売却する、「コンセッション」の仕組みを導入する点にある。

 麻生副総理はすでに2013年に米国CSIS(戦略国際問題研究所)の講演で「日本の水道をすべて民営化する」と発言している。この法案は水道施設の基盤強化の名のもと、「命の水」を民営化し企業の利潤・配当を生む「商品」へと変貌させ、しかも、大手の外資への売却も睨んだものとなっている。

 本来、水道法は、清浄、豊富、低廉な水をすべての国民に供給することを理念としており、これは生存権の保障と公衆衛生の向上を国の責務と定めた憲法25条に基づいている。しかし、今回の改正で理念が変質し、営利企業が「採算性」を優先する事業へと変容が濃厚となる。

 

◆ 世界32カ国で「再公営化」へと逆戻り 巨費、違約金、提訴と過大な負担も

 世界に目を転じれば、「失敗」の先例が多々ある。世界的には80年代の新自由主義の流れの中、「小さな政府」を掲げ、公共部門を縮小し運営の効率化と称し水道の民営化が図られた。しかし、料金高騰や水質悪化、不透明経営、企業倒産など問題化し、水道事業の「再公営化」へと逆戻りとなった先例が32カ国267件に上っている(NGO「トランスナショナル研究所」調査)。しかも企業からの買戻しに巨費を要し、違約金の発生や企業からの提訴となるなど、復元の道筋は容易ではない。

 フランス・パリ市は80年代半ば以降、水メジャー(巨大企業)の「スエズ」、「ヴェオリア」の2社と水道民営の複雑な仕組みを構築。水道料金が1985~2009年に3倍以上となり、事業者が自社の子会社に業務を下請けさせ利益確保するなど経営の不透明さも問題化。2010年に期間満了で契約更新せず公営事業に戻している。ドイツ・ベルリンでは水メジャーなどに水道公社の株式を売却する部分的な民営化がされたものの契約の非公開が問題化。公開を求める住民投票におされ、株式を買戻し契約解消に至るものの、かかった巨費が水道料金に上乗せされる事態となっている。

 この他、再公営化による契約破棄に対するISDS(投資家対国家の紛争解決)の枠組みによる提訴により再公営化が暗礁に乗り上げる例なども出ている。

 

◆ 医療機関でも水道の民営化は死活問題 法案の廃案を望む

 災害が多発する日本において水道施設の民営化は復旧や整備・補修、維持管理に大きな不安を残す。

 医療機関にとっては、血液透析、歯科治療、手術、処置、機械・器具洗浄、MRI冷却、入院患者の飲料水、調理、清掃、トイレなど多くの診療場面で大量に水を必要とする。利益追求の営利企業による水道運営は料金高騰、サービス低下を招き、医療機関の診療にとっても死活問題となる。われわれは水道法改正案の廃案を改めて強く求める。

2018年10月25日