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地域医療対策部長談話 「介護保険の3割負担に反対する サービス利用の高い『障壁』は、『介護離職』を増大させる」

介護保険の3割負担に反対する

サービス利用の高い「障壁」は、「介護離職」を増大させる

 

神奈川県保険医協会

地域医療対策部長  鈴木 悦朗


 介護保険改定法案が国会で審議されている。当初、社保審・介護保険部会で想定された、利用者の2割負担の対象拡大、軽度の要介護者の生活援助サービス(掃除・洗濯・調理)の保険外しは見送りとなり、介護納付金への総報酬制導入による応能主義の徹底など合理的な改定部分や、「介護医療院」創設とセットの介護療養病床の廃止も期限の6年延長と、迷走続きながらも現実的対応に落着している。しかしながら、利用者の3割負担導入は「介護の社会化」「介護地獄」「介護虐待」「介護心中」からの脱却という設立当初の“御旗”に完全に逆行している。われわれは、利用者「全体」の3割負担化の先鞭となる、3割負担導入に反対する。

 

◆ 社会的損失大きい、介護の社会化への背反、深刻さ広がる家族介護依存の政策路線

 介護保険は、2000年の制度施行当初、利用者の1割負担を緩和し、半年間0.5割(=5%)負担、しかもNPO法人の在宅サービスは3%負担と、旧措置制度からのソフトランディングのため政治的配慮がとられた。それが一転、2015年8月より一定所得以上は2割負担と倍加している。

 周知のとおり、家族介護依存からの解放どころか家族介護を前提に、社会は動いている。老老介護、同居世帯介護のみならず遠距離介護も日常となっている。

 「連合」調査(2015年)では、40歳以上の労働者で過去5年以内に親等の介護を経験した人で「仕事を辞めようと思ったことがある」が27.9%、実際に辞めた人が1.6%いた。その理由の上位は「業務に支障」48.1%がトップ、「体力が限界」44.1%、「制度を利用しても介護ができない」43.3%と続き深刻である。また介護への不安は「介護費用」60.1%が筆頭で、「いつまで続くか分からない」59.1%、「働き方を変えなければならない」40.8%が多く、働きざかりの「労働力」の点も含め「社会的損失」が大きくなっている。

 

◆ 社会保障の普遍主義に回帰を 医療の患者負担が、介護サービス利用者には重なっている

 今回の3割負担は年収340万円以上の12万人が対象である。全受給者496万人の2.4%とされ影響額は数十億円とみられる。しかし、医療保険にみるように、若人の3割負担統一以降、高齢者の一定所得以上に3割負担が導入され、現在75歳未満(65~74歳)は2割負担となり、重ねて75歳以上の2割負担化が審議会で議論されてきた。今回の介護保険も65歳以上の2割負担化が議論され、その末での3割負担の一部導入である。「制度の持続可能性を高めるため」との導入理由は影響額から考えれば眉唾である。今回の3割負担の先には、全体の2割負担化、終着は3割負担統一があると、考えるのは自然である。

 要介護度に応じた保険給付の支給限度基準額は軽度の要支援1が50,030円、中等度の要介護1は166,920円、重度の要介護5は360,650円だが、原則1割の利用者負担のため、利用率は要支援1で39.4%、要介護1で42.4%、サービスを最も必要とする要介護5でも61.8%と、いずれも低い (*1)

 要介護者の多くは基礎疾患を抱え、医療の患者負担に介護保険の利用者負担が重なる。負担が「過重」なのである。高齢者世帯1,271万世帯の半分は単身世帯である。年収は297.3万円で6割は家計状況が苦しい (*2) 。持ち家の有無、介護家族の存在、医療・介護資源の状況により、現実の人的・経済的負担は大きく変動する。利用者負担は、サービス利用の「障壁」でしかなく、年収で線引きし「高く」される理由も合理性はない。

 応能主義の保険料負担と給付の際の分け隔てない普遍主義は、社会保障の本旨である。

 われわれは、国策の「地域包括ケア」の進展を阻害し、「介護離職ゼロ」と真っ向から矛盾する、介護保険の利用者負担3割の導入に、改めて強く反対する。

2017年3月22日

 

(*1) 厚労省HP 介護保険制度の概要 介護保険とは

(*2) 厚労省「国民生活基礎調査 平成27年版」