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政策部長談話 「医療のビジネス化を狙う国家戦略総合特区の撤回を求める」

医療のビジネス化を狙う

国家戦略総合特区の撤回を求める

 

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 国家戦略特区法案が11月8日、国会で審議入りした。「国家戦略特区」は、「世界で一番ビジネスのしやすい環境をつくる」ことを目的に地域限定で大胆な規制緩和などを講じる制度。成長戦略の起爆剤として法案成立後、来年早々に全国で3~5カ所を特区に指定する。既に規制緩和の対象を医療、雇用、教育など6分野とし、検討を進める特例措置が定められている。この国家戦略特区は従来の構造改革特区、総合特区、先端医療開発特区(スーパー特区)と大きく違い、総理大臣主導のトップダウンの実行体制が敷かれる。「国際的ビジネス拠点」形成の文脈に、「医療」のビジネス化を位置づけ、医学部新設、保険外併用療養費の拡充が図られることとなる。われわれは、医療秩序を破壊し、健康保険の弱体化につながる国家戦略特区の撤回を強く求める。

 

 そもそも、国家戦略総合特区の創設は産業競争力会議の提案によるもの。この親会議の日本経済再生本部が「医療」を規制緩和の対象分野として決定した。

 そこでは、最高水準の医療を提供する「国際的医療拠点」を作るとし、(1)外国人医師の診察、外国人看護師の業務解禁、(2)病床規制の特例による新設・増設の容認、(3)先進医療ハイウェイ構想の拡充(保険外併用療養)をあげた。また、(4)医学部新設に関し、「高齢化社会に対応した社会保障制度改革や全国的な影響等を勘案しつつ、国家戦略特区の趣旨を踏まえ、関係省庁と連携の上、検討する」とされた。つまりは、ビジネス、経済成長に資する医学部である。

 既に、国家戦略特区の募集が8、9月になされ、全体で197件の提案がある。医療に関する提案は大阪府・市の混合診療特区や、成田市の医学部新設など19都府県市、3大学、3病院、4団体、11企業により計17件に及び作業部会がヒアリングをした85件のうち1/5を占めている。

 神奈川県は京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区とさがみロボット産業特区を統合した「格上げ」の提案をし、国家戦略特区の指定に、黒岩知事は自信を見せている。

 規制緩和となる先進医療ハイウェイ構想とは、「臨床試験」(治験)を「していない」、安全性・有効性が未確立、科学的確認がされていない抗がん剤などの医薬品、医療機器や再生医療などを併用する混合診療の対象項目を、短期間(3カ月)で決定・容認していく仕組みである。この国家戦略特区ではスピードアップのため厚労省職員が事前に出張相談までする。現行、保険外療養費制度で「先進医療B」として安全性が疑わしい医療が大手を振るっているが、この対象範囲を拡大し、不十分な技術審査すら厚労省内から民間に委託することとなる。医療の安全性が大きく揺らぐことは必至である。

 医学部問題も、すでに全国で定員増1,400名と14校分に及び、将来の人口減少を前に必要性が乏しく、医師過剰などへの対応も困難となり、医療秩序を大きく崩す、パンドラの箱となる。

 医療の営利産業化、市場化による経済成長の共同幻想は尽きないが、06年開業の横浜市の株式会社診療所は経営的に苦戦し、経済成長などにつながっていない。

 公的医療、社会保障の拡充こそが、安心な医療保障を約束し、雇用・経済波及効果が大きいことを政府試算や厚生労働白書は示してきた。民間医療保険や私費に大きく依存する医療制度、医療体制は未来がない。富裕層を相手の市場は規模に「限界」があるからであり、米国の製薬資本もTPPで皆保険の解体はいわず、共存共栄の道を提唱しはじめているのは、そのことの証左である。現在の健康保険に、企業的な風穴を開けては多くの国民の医療保障が覚束ない。それはひいては、生産力や消費、生活を貧弱なものとし成長を萎えさせる。国家戦略特区の幻想を捨て舵を切り替えること強く求める。

2013年11月13日