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政策部長談話 「診療報酬は凋落の一途 医療の再生産を保障するプラス改定は必須」

診療報酬は凋落の一途 医療の再生産を保障するプラス改定は必須

 

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 11月24日、財政制度等審議会は次年度診療報酬本体のマイナス改定を建議した。医師・看護師給与や診療報酬本体のみを切り分けたグラフで、物価・賃金と比較し「高止まり」との印象づける巧妙な作為を図っての話である。6年前にも同様の議論の歪曲、不公正な資料、情報操作の「手口」が使われており笑止千万である。事実は、診療報酬の極端な凋落である。われわれは改めて診療報酬のプラス改定を強く求める。

 

◆医療提供の対価が診療報酬 凋落の一途は歴然 医師収入に矮小化する繰り返されるウソ

 皆保険下での医療提供の対価が診療報酬である。医師、歯科医師や看護師、歯科衛生士、OT・PT、栄養士などコ・メディカルの「技術」や「労働」と、医薬品、医療材料、衛生材料の「モノ」を、点数表は本体と薬価で分離評価しているが、医療機関の提供する医療は、「技術」「労働」「モノ」が一体的である。ゆえに医療機関経営の原資である対価の診療報酬は一体的に論じられる必要がある。医療経済実態調査も同一視点である。

 巷の理解と異なり「本体」ではCTや超音波検査や血液検査、手術など、技術とモノが混然一体で評価されているものが数多くある。分離評価される「薬価」は、医薬品を医療機関の「購入価格」ではなく「公定価格」で評価するものである。これは医療機関と卸売業者との価格交渉により、医薬品の価格の「下落」を期待したものである。この経営努力、納入価と薬価の差の経営原資への充当は、制度上認められており、「フィクション」でも何でもない。「購入価格」としないのは「高止まり」を回避するためである。かつて「購入価格」だった「医療材料」「衛生材料」も現在は「公定価格」評価である。つまり政策的に分離評価しているだけである。薬価の引き下げ財源は、既に発生した医療機関原資の「現実」である。この“召し上げ”は全く理がない。

 その上で、診療報酬が初めてマイナス改定となった98年以降の状況を俯瞰するため97年を起点に、改定率と物価、公務員給与(人事院勧告改定率)の推移を見ると(下のグラフ)、診療報酬の凋落は歴然とする。これは診療報酬本体と薬価を合計したネットの改定率、賃金は民間給与ではなく公的サービスの医療の性格を踏まえ公務員給与とし、物価と合わせ医療費の構造割合で加重平均化し作図したものである。とりわけ、2006年の▲3.16%改定で極端に落ち込み、以降は浮上できず97年水準から10ポイント近くも下落している。

 

<1997年度を100としたときの診療報酬改定率・物価・公務員給与動向の推移>

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※ □:99.7|×:98.8|▲:97.8|◆:90.5

 

◆「本体マイナス改定」に楽観、錯覚は禁物 実質▲3.5%で医療崩壊の再来の危機に

 しかも、医療費の構造は人件費5割を割り込み(46.4%<H25年度>)、それ以外の医薬品や医療材料、委託費、光熱費が半分を超過する構成となっている。“人的集約産業”の医療で、モノのウエイトが相対的に高くなりつつある。翻れば、いわゆる「人的サービス」部分の低下である。医療経済実態調査では、看護師など医療従事者の「常勤換算」した給与は示されているが、「実際」の給与は示されず、医療機関の「従事者数」についても、いつの間にか示されなくなっている。「医療の質」が脅かされている。改定率の推移と「物価+公務員給与」の推移」のグラフの乖離幅分の面積が、医療機関が逸失した医療費となる。「失われた17年」を取り戻すには診療報酬の「底上げ」は当然である。

 2020年度の財政健全化に向け政府は躍起になっており、この5年間で1.9兆円の社会保障関係費の削減が予定されている。削減の大半は常識的に考えれば「医療」となる。単年度平均で3,800億円、改定率▲3.5%に匹敵する。危機的数字である。

 調剤の技術料の削減や、湿布・うがい薬・ビタミン等のOTC類似薬の完全な保険外し、ガスター等のスイッチOTC薬への変動給付率適用など早くも取り沙汰されている。が、医科・歯科の医療費が全体の8割を占める構図である。医療界の分断策に嵌れば、明日は我が身である。

 医療は地域、生活圏にあってこその社会的インフラである。医療機関が消失しては、医療制度の持続可能性も何もない。中医協・医療経済実態調査は、半数の医療機関の経営悪化を明らかにした。消費税増税での社会保障充実分(1%=2.8兆円/年)の着実な履行は「約束」である。財務省も年5千億円分は明示している。

 われわれは、医療崩壊の再来を招かず、医療の再生産の保障へつなぐ診療報酬プラス改定を断固求める。

2015年12月1日