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政策部長談話 「70~74歳の患者2割負担に反対する 消費税8%時の初診・再診料の引き上げ財源の捻出策では困る」

70~74歳の患者2割負担に反対する

消費税8%時の初診・再診料の引き上げ財源の捻出策では困る

 

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 参議院選挙の最中の7月9日、田村厚労相は70~74歳の患者負担を来年4月に2割へ引き上げることを視野に検討すると表明した。2割負担となれば、通院率の高い70歳以上の高齢者の受診抑制と治療中断がより引き起こされ、重症化や孤独死が数多く発生する危険性が高い。また高齢社会の下、団塊世代対策として敷かれる「地域包括ケア」のネットワークも、受診抑制が病態の悪化を招き、医療福祉体制が不十分な中で脆弱なものとなっていく。更には、与党の安定多数を背景に方針発表に踏み切った判断の裏には、来年4月の消費税8%実施に伴う、診療報酬への上乗せ手当の財源捻出の事情、深謀遠慮が見てとれる。われわれは、経済成長にも逆行するこの2割負担引き上げに反対する。

 

 患者負担と受診行動の相関を表す「長瀬指数」により、2割負担となれば病人の29%が受診できなくなると推定される。実際、1997年に健保本人が1割負担から2割へ引き上げられた際に、一日当たり患者数は約50万人減少と、極端に受診者数が落ち込んでいる(患者調査)。患者から見れば「公共料金」の倍加であり、経済余力の乏しい家計を直撃する。

 2割負担となれば、70~74歳のひと月の患者負担(平均)は通院で1,540円が3,080円へ、調剤薬局で1,210円が2,420円となり、合計で2,750円増の5,500円にもなる。高血圧で白内障治療の場合に内科と眼科の受診で月に1万円を超えることなる(社会医療診療行為別調査)。

 

 高齢者は確かに、1,400兆円の金融資産の6割を保有している。しかし、保有額は正規分布をしておらず、70歳以上の貯蓄の平均は男で1,131万円、女で1,540万円ではあるが、平均以下が約6割を占め偏在が著しい。貯蓄300万円以下は男32.2%、女23.2%に上る。また年金を主とする年間平均収入は男264万円、女247万円であるが、国民年金受給者の平均年金月額は5万5千円に過ぎない。

 この年代は4人に1人が介護保険を利用しており、利用料負担ひと月平均1万6千円が医療の患者負担に重なってくる。70~74歳の家計は平均では推し量れない歪な分布であり、医療の2割負担は抜き差しならない大事である。

 

 この2割の引き上げにより、特例的に1割に据え置くため投入していた約2,000億円の国庫財源が浮くが、奇妙な符合がある。来年の4月からの消費税8%に備え、診療報酬の初診料などの基本診療料を引き上げ補填する案がいま有力となっている。初診料・再診料、入院基本料を仮に全て10点ずつ引き上げると約2,000億円となる。

 ただ、これまでの消費税引き上げ時の計算方法にならえば、次年度診療報酬改定での消費税補填分の改定率は1.19%となり、医療費ベースで4,500億円(国庫ベース1,100億円)となる。基本診療料で20点強の引き上げに相当する。従来の国庫負担割合であれば残りの900億円(医療費ベース3,600億円)は純粋な改定率0.95%のプラスに回せることになる。

 補填額の積算や補填額の国庫での分担をどうするかは今後の議論だが、このウラ意図が透けている。

 70~74歳の2割負担化は、家計に比較的余力のある層の消費行動にもブレーキをかけ、内需を抑制し経済成長にも資さないことは明白である。

 人生の終盤に入る70歳以上は、60代に比べ通院率が1.2倍に跳ね上がる。病態や生活実態を無視した感覚的な「所得に応じた負担」論では立ちいかない。われわれは、2割負担化に強く反対する。

2013年7月17日

 

平成26年4月診療報酬改定での消費税補填分の改定率(試算)

 

(1) 薬価基準分

 22.1%(薬剤費の割合)×(108/105-1)=0.631%

 

(2) 特定保険医療材料

 2.7%(特定保険医療材料の割合)×(108/105-1)=0.077%

 

(3) 診療報酬本体分

 {100%-47.7%(人件費)-22.1%(薬剤費)-2.7%(特定医療材料)-4.4%(非課税品目)}×2.1/100(消費者物価への影響)=0.485%

 

補填分の全体改定率・・・ (1)+(2)+(3)=1.19%

 

*平成9年4月の消費税5%引き上げ時の計算方法を踏襲

*薬剤費、特定保険医療材料、人件費、非課税品目の割合は中医協・消費税分科会資料(平成25年3月18日)

*消費者物価への影響は三菱東京UFJ銀行「経済レビュー」(平成25年4月17日)

以 上