保険医の生活と権利を守り、国民医療の
向上をめざす

神奈川県保険医協会とは

開業医を中心とする保険医の生活と権利を守り、
国民の健康と医療の向上を目指す

TOP > 神奈川県保険医協会とは > 私たちの考え > 2015/4/21 医療情報部長談話 「周知・準備不足露呈のマイナンバー 施行待たぬ拡大案は国民を欺く『暴挙』 改定法案廃案と今秋施行の中止を求める」

2015/4/21 医療情報部長談話 「周知・準備不足露呈のマイナンバー 施行待たぬ拡大案は国民を欺く『暴挙』 改定法案廃案と今秋施行の中止を求める」

周知・準備不足露呈のマイナンバー

施行待たぬ拡大案は国民を欺く「暴挙」

改定法案廃案と今秋施行の中止を求める

神奈川県保険医協会

医療情報部長 田辺 由紀夫


 政府は3月10日、共通番号(マイナンバー)制度と個人情報保護法の改定案となる「個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定、国会に提出。本格的な審議が始まろうとしている。とりわけマイナンバー制度の改定案については、新たに預貯金口座に加え、特定健診情報、予防接種履歴も付番・紐付けの対象とし、利用範囲を拡大するとしている。しかしこの改定案は、施行後3年を目途に利用範囲を検討することを規定する番号法の附則と、医療情報の機微性に配慮するとした法成立時の趣旨に反する"暴挙"である。我々は拙速な改定法案の審議を戒め廃案を求めるとともに、今秋のマイナンバー制度の施行中止を求める。

 2013年5月に成立した番号法は、利用(付番・紐付け)する個人情報の範囲について、行政が保持・管理する社会保障・税・災害対策の3分野の個人情報に限定している。また、法の附則第6条では「政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況等を勘案し、...(中略)...検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、国民の理解を得つつ、所要の措置を講ずるものとする」と規定している。番号法が審議された2013年第183回国会でも、政府は「3年間の施行状況を鑑みて検討する」と答弁、利用範囲の拡大が必ずしも規定方針ではないことを明言していた。しかし今改定案は、2015年10月5日の施行を待たずに出された拡大案であり、法律の附則や国会答弁を無視している。

 とりわけ、政府はこれまで番号法審議の段階から医療情報の機微性を重視し、マイナンバーの利用範囲とはしてこなかった。故に現在、医療分野はマイナンバーとは切り分けた独自の番号制度の創設を厚労省で協議しているという経緯がある。しかし、今改定案で追加対象としている特定健診情報は、個人の身長・体重や血液検査等が含まれており、紛れもなく医療情報である。これは完全に約束違反である。

 政府は前のめりだが、そもそもマイナンバー制度自体が7割超の国民に周知されていないことは、2月に発表された内閣府の世論調査でも明らかとなっている。そればかりか、政令・省令等の未公布や情報連携システム等の未整備など、政府や自治体での対応に大幅な遅れが目立つ。更には、従業員や扶養家族の番号管理が義務付けられる企業・事業者の体制等は、8割が対応できていないのが実態だ(「日本情報経済社会推進協会」調査より)。つまり、社会的にも受け入れ態勢が整っているとは、とても言える状況にはない。

 これほど制度の周知や浸透、準備が進まない中、拡大法案の成立までも強行に進めようとする政府の姿勢には、国民の社会的認知の低さに乗じて"なし崩し"に制度拡大をしようとする思惑が透けて見える。これは国民を愚弄した詐欺的な暴挙と言わざるを得ない。

 マイナンバーには情報漏洩、悪用、監視社会化など、不安や危険が常に付きまとう。見切り発車は必ず混乱や事故・事件を引き起こす。拡大法案の廃案と制度の施行中止を強く求める。

2015年4月21日

周知・準備不足露呈のマイナンバー

施行待たぬ拡大案は国民を欺く「暴挙」

改定法案廃案と今秋施行の中止を求める

神奈川県保険医協会

医療情報部長 田辺 由紀夫


 政府は3月10日、共通番号(マイナンバー)制度と個人情報保護法の改定案となる「個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定、国会に提出。本格的な審議が始まろうとしている。とりわけマイナンバー制度の改定案については、新たに預貯金口座に加え、特定健診情報、予防接種履歴も付番・紐付けの対象とし、利用範囲を拡大するとしている。しかしこの改定案は、施行後3年を目途に利用範囲を検討することを規定する番号法の附則と、医療情報の機微性に配慮するとした法成立時の趣旨に反する"暴挙"である。我々は拙速な改定法案の審議を戒め廃案を求めるとともに、今秋のマイナンバー制度の施行中止を求める。

 2013年5月に成立した番号法は、利用(付番・紐付け)する個人情報の範囲について、行政が保持・管理する社会保障・税・災害対策の3分野の個人情報に限定している。また、法の附則第6条では「政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行の状況等を勘案し、...(中略)...検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、国民の理解を得つつ、所要の措置を講ずるものとする」と規定している。番号法が審議された2013年第183回国会でも、政府は「3年間の施行状況を鑑みて検討する」と答弁、利用範囲の拡大が必ずしも規定方針ではないことを明言していた。しかし今改定案は、2015年10月5日の施行を待たずに出された拡大案であり、法律の附則や国会答弁を無視している。

 とりわけ、政府はこれまで番号法審議の段階から医療情報の機微性を重視し、マイナンバーの利用範囲とはしてこなかった。故に現在、医療分野はマイナンバーとは切り分けた独自の番号制度の創設を厚労省で協議しているという経緯がある。しかし、今改定案で追加対象としている特定健診情報は、個人の身長・体重や血液検査等が含まれており、紛れもなく医療情報である。これは完全に約束違反である。

 政府は前のめりだが、そもそもマイナンバー制度自体が7割超の国民に周知されていないことは、2月に発表された内閣府の世論調査でも明らかとなっている。そればかりか、政令・省令等の未公布や情報連携システム等の未整備など、政府や自治体での対応に大幅な遅れが目立つ。更には、従業員や扶養家族の番号管理が義務付けられる企業・事業者の体制等は、8割が対応できていないのが実態だ(「日本情報経済社会推進協会」調査より)。つまり、社会的にも受け入れ態勢が整っているとは、とても言える状況にはない。

 これほど制度の周知や浸透、準備が進まない中、拡大法案の成立までも強行に進めようとする政府の姿勢には、国民の社会的認知の低さに乗じて"なし崩し"に制度拡大をしようとする思惑が透けて見える。これは国民を愚弄した詐欺的な暴挙と言わざるを得ない。

 マイナンバーには情報漏洩、悪用、監視社会化など、不安や危険が常に付きまとう。見切り発車は必ず混乱や事故・事件を引き起こす。拡大法案の廃案と制度の施行中止を強く求める。

2015年4月21日