スマートフォン版へ

  1. HOME
  2. 神奈川県保険医協会とは
  3. 私たちの考え
  4. 政策部長談話 「紹介状なし初診患者は大病院の外来患者の1%に過ぎない 機能分化を口実にした差額負担の野放図な拡大に強く反対する」

政策部長談話 「紹介状なし初診患者は大病院の外来患者の1%に過ぎない 機能分化を口実にした差額負担の野放図な拡大に強く反対する」

紹介状なし初診患者は大病院の外来患者の1%に過ぎない

機能分化を口実にした差額負担の野放図な拡大に強く反対する

 

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 次期診療報酬改定を巡り中医協の議論は第二ラウンドに入った。16年度改定で導入された500床規模以上の病院で紹介状を持たない初診患者への5,000円以上の定額負担の義務化に関し、調査結果を基に支払側より定額負担の引き上げや200床以上の病院への対象病院の拡大が主張されている。しかしながら報道数字とは違い、紹介状なし初診患者は大病院の外来患者の1%程度でしかない。そもそも、この保険外の差額負担と病診の機能分化は無関係であり、この定額負担に拘泥し、金額拡大や対象病院の拡大を際限なく図ることは、現物給付の医療保険の歪曲、潜脱に他ならない。われわれは、この差額負担拡大の路線に強く反対する。

 

◆ 検証部会の数字は、500床以上の大病院の紹介なし患者は15% 報道の40%は議論をミスリード

 問題の定額負担は、保険給付の定率負担の枠外、保険外の選定療養として最低5,000円以上を紹介状のない初診患者に課すもの。紹介率が低い場合は初診料が282点から209点へ大幅に削減もされる。対象は特定機能病院(=大学病院等)と500床以上の地域医療支援病院となっている。これは、各々の病院の機能の発揮を狙った患者の重症度に応じた「交通整理」と、勤務医の負担軽減を狙った施策と解されている。

 この施策の「効果」を検証するため、調査結果が今年5月31日の中医協に示された。が、施策導入の前後で紹介状なし初診患者の割合が42.6%から39.7%へと僅か▲2.9ポイントでしかないことから定額負担の見直しが浮上している。また前後で5,000円未満から5,000円以上へ引き上げた200床以上の病院で定額負担徴収患者(=紹介状なし初診患者)が32.0%減少したとし、200床以上の病院へも適応し対象拡大を図るべきと中医協の支払側委員が言及している。

 しかし、調査結果の数字の解釈に問題と難点がある。この紹介状なしの初診患者への定額負担は、「緊急その他やむを得ない事情がある場合」は求めないこととなっている。具体的には (1) 救急患者、(2) 公費負担医療の対象患者、(3) 無料低額診療事業の対象患者、(4) HIV感染者、(5) 自施設の他科を受診中の患者、(6) 医科・歯科の院内紹介患者、(7) 特定健診、がん検診等の結果で精密検査の指示があった患者、等が該当とされ、紹介状がなくとも問題とされない取扱いとなっている。

 よって調査結果では、本来、「問題とされるべき紹介なし初診患者」(=定額負担徴収患者)は15.5%でしかない。しかも、500床以上の病院の外来患者に占める初診患者は9.3%に過ぎないので、問題とされている紹介のない初診患者は、外来患者全体の1.4%(=15.5%×9.3%)に過ぎない。ここに施策の重心を置いても、勤務医の負担軽減は図られるわけはない、これが道理である。事実、勤務医の負担感は改善されていない。

 

◆ 5,000円へ定額負担を上げても変化は微減 紹介なし患者への定額負担は20年前から実施ずみ

 また、5,000円へ定額負担を引き上げた病院で、紹介状なし患者が3割減少したとの指摘も、事実は「問題とされている紹介なし初診患者」の「比率」でみると異なっている。施策の導入前後で22.3%が16.5%へと5.8ポイント下落したに過ぎない。これは、500床以上の病院で「問題とされる紹介なし初診患者」が施策の導入前後で20.2%から15.5%へと4.7ポイント下落したことと大差がない。よって200床以上の病院への5,000円差額負担の導入、適応拡大も道理がない。200床以上の病院の初診患者は外来で12.1%であり、500床以上と同様に「問題とされる初診患者」は1%に過ぎず、勤務医の負担軽減とは関係がない。

 当協会は、これまで何度も指摘をしてきているが、紹介状のない患者への差額・定額負担の上乗せは、1994年以来、これまでも裁量規定で200床以上の病院へ導入され、実態としてはほとんどの大病院で徴収されてきている。また、診療報酬や医療法規定により、「紹介率」「逆紹介率」は算定要件や承認要件に盛り込まれ、地域広報や事前連携などの経営努力をするなかで病診連携は形成されてきている。病院と診療所の機能分担、機能分化の推進を、差額負担の増額に期待し支持する向きが少ないことは、中医協調査(2013年度)でも明白である。もはや差額負担での患者の交通整理は結論が出ているのである。

 しかも、診断がつかない難病患者は大学病院などをいくつも転々としている実態があり、紹介状の有無で一律的に過度な差額負担を強いる施策は人道に反している。

 受診の経済的ハードルを高くし、患者の受診動向を整理するという思考は安易な発想であり、現在の過重な患者負担を支える思想と通底してさえいる。この差額定額負担に理解を示す医療者は、患者負担増による患者減少の自縄自縛を牽引しているに等しく再考をすべきである。

 

◆ 医療機関の機能別の差額負担路線の布石 かかりつけ医機能との結合も懸念

 選定療養(=保険給付を前提としない保険外併用:差額ベッド等)のメニュー追加への意見公募が毎年の恒例とされ、この紹介状なし受診患者の差額定額負担の対象を救命救急センターや、大学病院クラスの医療機能を持つ200床未満病院へ適応拡大することが提案されている。それに止まらず、薬剤師の配置数や後発医薬品使用率などの基準を満たす病院での院内処方の際の差額費用徴収などの新提案も寄せられている。これらは今年7月5日の中医協に報告されている。

 つまり、これらの提案は医療機能に応じた差額徴収の拡大である。機能の差別化による差額徴収の合法化であり、医療を受ける側にとって給付差別となる。「かかりつけ医」機能との結合さえ、懸念される。

 次期改定を巡り取り沙汰される、紹介なし患者への差額定額負担を200床以上病院へ拡大することや、差額金額の引き上げは、大局的にみれば差額定額負担の拡大路線の水先案内人となる。これは保険給付の縮小であり、保険給付の低質・固定化にもつながりかねない。われわれは、野放図な差額定額負担の拡大につながる、紹介なし初診患者への差額定額負担拡大に強く反対する。

2017年9月11日

 


(参考)

◆ 問題とされる紹介なし初診患者の割合の変化

500床以上病院 (n=139)   平成27年10月 平成28年10月  
初診患者数 2,373.6人 2,196.7人  
問題の紹介なし初診患者数 478.9人 341.0人  
問題の紹介なし初診患者比率 20.2% 15.5% ▲4.7ポイント

 

◆ 16年改定を機に定額負担を5,000円未満から5,000円以上にした病院の問題とされる初診患者の変化

500床以上病院と

200床以上500床未満病院

(n=110)

  平成27年10月 平成28年10月  
初診患者数 2,211.7人 2,031.6人  
問題の紹介なし初診患者数 494.1人 336.0人  
問題の紹介なし初診患者比率 22.3% 16.5% ▲5.8ポイント

*1) 中医協「平成28年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(平成28年度調査)」図表240,248より作成

*2) 「問題とされる紹介なし初診患者」とは、同上調査の「定額負担徴収対象患者」のこと

 


◆ 初診と再診の割合(病床規模別)

20170911sankou.jpg

<H27.4.8中医協資料>