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2017/12/22 政策部長談話 「診療報酬の実質▲1.25%改定に抗議する 『ネット』マイナスの悪循環に歯止めを」

診療報酬の実質▲1.25%改定に抗議する

「ネット」マイナスの悪循環に歯止めを

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 2018年度診療報酬改定の改定率が、▲1.19%(本体0.55%、薬価・材料▲1.74%)で財務・厚労両大臣合意で決着した。しかし、「外枠」で大型門前薬局の適正化分▲60億円を含めると実質▲1.25%となる。これは財務省「建議」が提起した▲2.5%以上の半分だが、16年度改定の▲1.03%を上回る。医療経済実態調査で一般診療所の1/4、歯科診療所の1/8が損益率がマイナス(赤字)であり、双方とも5割程度が経営悪化(対前年度比損益率マイナス)と前回調査より悪い数字が示されている。今回の改定率はこれに応えたものとなっていない。われわれは医療の再生産と医療の質・安全の確保に背を向けた、「ネット」マイナス改定の連続、悪循環に強く抗議する。

◆ 財務省の改定率▲2.5%以上アナウンスの計略と報道による翻弄

 実質▲1.25%の改定率により社会保障関係費の自然増は想定どおり1,340億円の削減で5,000億円程度となっている。ここに至るまで、報道では本体マイナスを期した財務省の「完敗」などの記事がでたが、終わってみれば財務省も織り込み済みなど、許容の範囲と明らかにされている。マイナス幅を大きく吹っかけて半分で落し安堵感を誘う「高等戦略」、「計略」だった感は拭えない。中医協で診療報酬改定の「基本方針」への診療側・支払側の意見表明の前に、改定率が報道で流れるなど、本来のプロセスが無視される「前代未聞」の事態さえ起きている。

 改定率を巡っては、①「医師の賃金攻防激しく」(日経)、②「診療報酬引き上げは税金、保険料、患者負担の増加を招く」など、事業所収入である診療報酬の歪曲・矮小化や診療報酬「本体」に特化し負担増を強調したマスコミ報道を通じて、医療者と患者・国民の「分断」「情報操作」が巧妙に図られたのも特徴である。

 診療報酬は「本体」プラスといえども、「ネット」マイナスであり、総医療費の伸びは圧縮され、全体的には「負担増」とはならない。しかし本体0.55%で600億円増と、介護報酬0.54%で140億円増、障害福祉サービス0.47%で60億円増と、同列で負担増と明示する扱いが報道されたりした。

◆ 薬価財源の技術料充当の回復と初・再診料への重点配分は道理

 今回も前々回以降と同様、薬価引き下げ財源は「本体」(技術料)への振り替え充当がなされず、「本体」だけに焦点が当てられ続けた。薬価(公定価格)と市場実勢との「乖離幅」は価格交渉による経営努力であり、経営原資として賃金や諸経費に回っている。「フィクション」ではなく「既遂」の現実である。医療費は医科で20%、歯科で10%は薬剤料である。医薬分業が70%台とは、処方箋枚数ベースの話であり、医療機関件数ベースではもっと少ない。「院内処方」の医療機関は少なくとも3割程度はある。この薬価差召し上げの手法がまかり通り続ければ、医療経営難のスパイラルは泥沼化する。当然、患者一人あたり医療費は超高齢社会のもと減少し、医療水準、医療内容の維持が難しくなる。

 2019年度以降、薬価は毎年改定となり、財務省の唱える医療費を自然増分に留める改定率▲2.5%以上(2年間分の伸びの調整)は実現の射程距離となる。2019年度以降の社会保障関係費増も5,000億円が限度と、財政審「建議」は早々に打ち出している。このままでは惨状は明白だ。

 改定に際しては初・再診料への重点配分は近年の医療費構成比率低下傾向から最低限の道理である。

 われわれは、①薬価引き下げ財源召し上げ、②「外枠改定」手法、③報道による改定率「辞令」(中医協の軽視)を改め、④実質マイナス改定の完全な「既定路線化」を方向転換することを強く求める。

 われわれは改めて、今回の診療報酬マイナス改定に強く、抗議する。

2017年12月22日

参考資料

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診療報酬の実質▲1.25%改定に抗議する

「ネット」マイナスの悪循環に歯止めを

神奈川県保険医協会

政策部長  桑島 政臣


 2018年度診療報酬改定の改定率が、▲1.19%(本体0.55%、薬価・材料▲1.74%)で財務・厚労両大臣合意で決着した。しかし、「外枠」で大型門前薬局の適正化分▲60億円を含めると実質▲1.25%となる。これは財務省「建議」が提起した▲2.5%以上の半分だが、16年度改定の▲1.03%を上回る。医療経済実態調査で一般診療所の1/4、歯科診療所の1/8が損益率がマイナス(赤字)であり、双方とも5割程度が経営悪化(対前年度比損益率マイナス)と前回調査より悪い数字が示されている。今回の改定率はこれに応えたものとなっていない。われわれは医療の再生産と医療の質・安全の確保に背を向けた、「ネット」マイナス改定の連続、悪循環に強く抗議する。

◆ 財務省の改定率▲2.5%以上アナウンスの計略と報道による翻弄

 実質▲1.25%の改定率により社会保障関係費の自然増は想定どおり1,340億円の削減で5,000億円程度となっている。ここに至るまで、報道では本体マイナスを期した財務省の「完敗」などの記事がでたが、終わってみれば財務省も織り込み済みなど、許容の範囲と明らかにされている。マイナス幅を大きく吹っかけて半分で落し安堵感を誘う「高等戦略」、「計略」だった感は拭えない。中医協で診療報酬改定の「基本方針」への診療側・支払側の意見表明の前に、改定率が報道で流れるなど、本来のプロセスが無視される「前代未聞」の事態さえ起きている。

 改定率を巡っては、①「医師の賃金攻防激しく」(日経)、②「診療報酬引き上げは税金、保険料、患者負担の増加を招く」など、事業所収入である診療報酬の歪曲・矮小化や診療報酬「本体」に特化し負担増を強調したマスコミ報道を通じて、医療者と患者・国民の「分断」「情報操作」が巧妙に図られたのも特徴である。

 診療報酬は「本体」プラスといえども、「ネット」マイナスであり、総医療費の伸びは圧縮され、全体的には「負担増」とはならない。しかし本体0.55%で600億円増と、介護報酬0.54%で140億円増、障害福祉サービス0.47%で60億円増と、同列で負担増と明示する扱いが報道されたりした。

◆ 薬価財源の技術料充当の回復と初・再診料への重点配分は道理

 今回も前々回以降と同様、薬価引き下げ財源は「本体」(技術料)への振り替え充当がなされず、「本体」だけに焦点が当てられ続けた。薬価(公定価格)と市場実勢との「乖離幅」は価格交渉による経営努力であり、経営原資として賃金や諸経費に回っている。「フィクション」ではなく「既遂」の現実である。医療費は医科で20%、歯科で10%は薬剤料である。医薬分業が70%台とは、処方箋枚数ベースの話であり、医療機関件数ベースではもっと少ない。「院内処方」の医療機関は少なくとも3割程度はある。この薬価差召し上げの手法がまかり通り続ければ、医療経営難のスパイラルは泥沼化する。当然、患者一人あたり医療費は超高齢社会のもと減少し、医療水準、医療内容の維持が難しくなる。

 2019年度以降、薬価は毎年改定となり、財務省の唱える医療費を自然増分に留める改定率▲2.5%以上(2年間分の伸びの調整)は実現の射程距離となる。2019年度以降の社会保障関係費増も5,000億円が限度と、財政審「建議」は早々に打ち出している。このままでは惨状は明白だ。

 改定に際しては初・再診料への重点配分は近年の医療費構成比率低下傾向から最低限の道理である。

 われわれは、①薬価引き下げ財源召し上げ、②「外枠改定」手法、③報道による改定率「辞令」(中医協の軽視)を改め、④実質マイナス改定の完全な「既定路線化」を方向転換することを強く求める。

 われわれは改めて、今回の診療報酬マイナス改定に強く、抗議する。

2017年12月22日

参考資料

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