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政策部長談話 「ジェネリック礼賛傾向は危険 経済性優先に潜む陥穽」

ジェネリック礼賛傾向は危険

経済性優先に潜む陥穽

神奈川県保険医協会

政策部長  森 壽生


 医療制度「改革」の一環として、この4月から後発医薬品(ジェネリック)使用の促進のため、処方箋様式の変更がなされた。「後発医薬品への変更可」という欄が設けられ、医師が署名をすれば薬局で後発品が処方できるようになった。これと軌を一とするかのように、テレビCMや新聞の全面広告など、ジェネリック医薬品の宣伝が盛んに行なわれるようになっている。とりわけ3割となった患者負担の軽減に資する"福音"のごとく喧伝されている。われわれは、この現状を非常に危惧し憂えている。

 なぜならば、医療・医学の観点から現状のジェネリック医薬品は"玉石混交"であり、安価だからと経済性のみ優先した使用は、治療上の有効性を大きく損うからである。また、喧伝されている経済性も、診療報酬の仕組みにより必ずしも患者にとって「安くはない」事実が明らかにされていないからである。

 

 後発医薬品とは先発医薬品の特許有効期間が切れた後に製造される医薬品。90年代中頃から医療費抑制の観点から岡光・元薬務局長らが品質向上・安定供給の施策を講じ、着々と普及を図ってきたものである。02年より診療報酬での政策誘導がとられ今日に至っている。総医療費31兆円のうち約6兆円を占める薬剤費を、ジェネリックへの転換で1兆円の削減ができると目論んでいる。

 

 しかしながら、現状のジェネリック医薬品は、医療関係者以外にその問題性がほとんど理解されていない。後発医薬品は先発品と成分が同じとされているが、全く同一の物質ではない。製造方法や添加物が違い成分の含有量が違っている。つまり、服薬後の有効成分の血中濃度が違うということであり、有効性・安全性、効果が同等であるという保証はない。事実、いくつかのジェネリックの中には先発品とその効果を比較して有意に劣っているという報告がある。

 

 しかも喧伝されている患者負担軽減だが、事実ではない。ジェネリックの薬剤料が先発品の7割も安いかのような広告がなされているが、汎用薬の場合は2割から5割程度に過ぎず、ジェネリックに薬局が切り替え処方することで、後発医薬品調剤加算、後発医薬品情報提供料が上乗せされる。

 例えば、糖尿病治療薬のベイスンと後発医薬品のベロムを2週間投与として主な料金を比較した場合、ベイスンだと薬剤料630円と処方箋料204円と薬局調剤料169円の計1003円だが、ベロムは薬剤料462円と処方箋料、薬局調剤料に加え、後発医薬品調剤加算84円と後発医薬品情報提供料30円が上乗せされるので計949円となり、その差額は54円に過ぎない。

 

 そもそも、ジェネリックは製造承認にあたり、先発品と違ってヒトに対する臨床試験は行なわれておらず、溶質・溶解試験のみであり、有効性・安全性に関する資料提出も義務付けられていない。また市販後調査が義務付けされておらず、薬害が起きた場合に責任の所在が不明となる構図となっている。更には製造ラインが既存ラインの転用であるため同一シートに別の医薬品が混入することがあり、そのことの報告体制や回収システムも持っておらず、安全性・品質管理に問題がある。われわれは最低限、市販後の第4相試験を行なうべきだと主張する。

 

 加えて、従来から医療用医薬品はCMが禁じられているにもかかわらず、「個別医薬品名ではない」との理由で容認、放置している厚労省医薬食品局の対応も無責任である。

 この4、5月、全国で出された処方箋の既に10%が、薬局で患者の申し出によりジェネリックへと変更となっており、これを加速させるNTTデータによるジェネリック転換促進の患者個別通知事業も本格的に始動した。その上、沢井薬品は健保組合と協力し『ジェネリック医薬品お願いカード』を無償で患者に配布し、医療機関および薬局の窓口に意思表示をしやすいよう"誘導"も行なっている。

 

 ジェネリックメーカーについては薬剤の安定供給の観点からも、医療機関からみると不安を覚える。なぜならば資本力・経営体力がないため、儲かるときだけ儲けて売り逃げする危険性が高いからである。

 

 健康や生命は決して安売りしてはいけない。安全より安価が強調される医療政策は本末転倒である。医療の価格破壊は健康破壊にすぎない。われわれは憲法25条を放棄した、国の無責任なジェネリック促進策を指弾するともに、安全性に立脚した施策へ転換することを強く求めるものである。

2006年9月20日