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開業地選択のポイント〜その2「マーケティング・リサーチ」

3.マーケティング・リサーチ 

 立地の候補地が絞られてきたら、実際に開業したとして、どの程度の受診がありそうなのかを検討する必要があります。この結果によって、最終的な立地の場所を決める参考にします。また、結果があまりよくなければ、他の場所を探すとか、計画を修正して再度受診者の予想と医院経営の収支を検討することになります。

 ただし、あくまで予想は予想ですので、実際に開業してみた数字がその通りにいくわけではありません。決定する要因の1つと考えて、自分のやりたい診療を度外視してまで、その結果に拘泥する必要はありません。

1)調査事項

(A) 地域住民の人口、年齢階層別人口、地域産業、職業別人口、今後の開発計画・交通計画などの開業予定地の概要を把握します。

(B) 開業予定地周辺の現地調査。大きな道路や川といった診療圏を沸けるものがどこにあるのか、人の流れはどの方向からどの方向へいくのかを把握します。

(C) 地域住民の医療要求は、どういうものなのか実際に住民に聞いてみて、自分が考えている診療所機能と合っているかどうかを確認します。

(D) 競合医院は、どれくらいの距離にいくつあるか、また患者数はどうなのかを把握します。

(E) 以上のことを加味してみて、どのくらいの受診者数がありそうかを、統計資料をもとに作成してみます。

2)上記の項目の調査方法

(A) 都市計画・交通計画・交通統計データ(バス地下鉄路線図や各駅での乗車降車数など)・人口動態のデータ(各町内別の年齢別人口―経年的な変化など)・医療関連のデータ(死亡率・出生率・医療費統計など)は、最寄りの市町村役場や県庁の担当課や保健所で入手可能です。また、市町村役場では統計データや街の情報の掲載された冊子・広報を作成しているので、その中から様々な情報も得られます。面倒でも何回か通うことをお勧めします。窓口の担当者と顔見知りになることも今後のこともあり重要なことです。

(B) 行政機関の窓口で入手したものを利用してもいいですが、やはり自分で現地を歩いて実際に見てみましょう。人の流れは何時くらいが多いか、人の流れの時間帯での変化もチェックしておくといいでしょう。

(C) 統計データと近隣の医療機関の分布で、平均的な医療ニーズは把握できます。潜在的な医療ニーズに関しては、自分で街の様子を歩いて見ると同時に、ある地域を選んでアンケート調査を行うのも方法です。しかし、実際には個人では難しいので人と雑多な情報が集まる喫茶店などで聞いてみるのも方法かと思います。

3)マーケティング・リサーチ

マーケティング・リサーチは以下のような方法で行います。

(A) 診療圏の想定

 診療科目別診療圏の目安を参考に、駐車場の有無、人の流れ、地理的な条件を考慮して診療圏を想定します。

(B) 人口の調査

 次に統計データをもとにして、住民人口を町別に算出します。

(C) 受療率の選定

 厚労省が行っている「患者調査」の中にある受療率表から、開業する診療所の機能にあった疾病を選び出します。 参考・・・厚生労働省サイト「厚生労働省統計表データベースシステム第2編 保健衛生 第2章 医療

(D) 患者数の算出

 住民人口に受療率を掛け合わせると、1日あたりの推定患者数が導き出されます。

4)マーケティング・リサーチの留意点

 先生がご自身でこの数値を計算することは、諸要素の算定に限界がありますので、薬問屋や会計事務所、コンサルタントに依頼することが多いと思われます。出された数値を鵜呑みにしないで、数値の精度は算定方法を聞いて確認してください。また、ご自分の足と目で開業地を確認され、その情報もリサーチ結果に加味して来院患者数を想定ください。

 調査結果の信頼度ですが、開業後数年たって調査数値を大幅に上回っているところは院長の経営努力が大きく影響していますし、調査結果に及ばないところの中には、調査精度が問題というよりも院長の経営姿勢に問題がある場合もあります。ただし、リサーチ経験の豊富な会社が実施したのであれば、ノウハウの蓄積は十分あるとお考えください。

(...続く)