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医師・開業経験談

 神奈川県保険医協会では、これから新規で開業される医師、歯科医師の先生方への応援・支援の一環として、「開業セミナー」を開催しております。本セミナーでは、各分野の第一線で活躍する専門家が開業に必要な様々なノウハウを提供するほか、先輩開業医の本音が聞ける開業経験シンポジウムなど開業前の先生方と同じ目線に立って企画しております。

 ここでは、医科開業医の先生(匿名)の開業経験談をいくつかご紹介いたします。ぜひご一読いただき、直近に開催する「開業セミナー」にご参加いただきますよう、お願いいたします。

 


[目 次]

※タイトルクリックで本文にジャンプします

自分が納得しなければ患者も集まらない リスクヘッジは万全に(H24年4月開業)

業者の説明に“翻弄”クリニックモールでも患者が来るとは限らない(H23年7月開業)

女性起業家を支援する好待遇な融資制度を活用(H23年5月開業)


 

自分が納得しなければ患者も集まらない 

リスクヘッジは万全に

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開業日 :H24年4月

開業年齢 :50歳代

標榜科目 :外科

開業形態 :ビルテナント

 

 これまで勤務してきた病院でお付き合いしてきた患者さんを通して、開業した後も継続して診ていきたいという想いが強く、勤務していた病院の近くで開業に踏み切りました。開業の準備期間は約半年。この短い間、相談に乗ってもらったのは一人の同僚医師です。相談した一番の内容は、資金繰りと開業するまでの流れですね。この過当競争の中に埋もれないようにするにはどうしたらいいのかといった不安な点を、ベテラン開業医の先生に相談に乗ってもらい、実際に生の声を聞けたことは、大変参考になりました。

 

 開業をする際に一番苦労したのは、資金調達です。初めて銀行に行った際は、全く貸すつもりはないという一言。ある方の紹介で何とか借りることはできたのですが、借りるまでの期間は、ものすごく時間がかかりましたね。一度貸すと銀行が言ってからも、審査期間が異常に長かったので、その期間はとても辛かったですね。開業準備の中で、自分自身の気持ちが一番折れそうになったのはこの時ですね。

 中古医療機器の利用は最初から考えませんでした。新しい医療機器を扱っていることも一つのクリニックの宣伝になると考えたからです。私のクリニックはいくつかの大きな病院が周りにあるのですが、自分のクリニックと病院が近い場所で、特異性を出して開業しようと思っていたので、新しい医療機器、機能を患者さんに提供することは、開業する上で外してはならないポイントだと考えました。

 

 クリニックの広告宣伝は、口コミがほとんどです。長い間、同じ地域で診療していたということもあり、繋がりで来てくれる患者さんやその患者さんからの口コミで来院してくれる方がほとんどです。但し、開業前は新聞折り込みチラシやポスティング、内覧会なども実施しました。実際、折り込みチラシを持って来院してくださる患者さんも何人かいましたね。開業後もクリニックの宣伝や広告は常に見直しを図っています。分かりやすいホームページを始め、今回タウンニュースにクリニックを紹介してもらうことを予定しています。どこのクリニックにとっても同じ悩みだと思いますが、開業してからも集患対策は継続した課題になります。開業後も、自分が有効だと考えるクリニック紹介をしていくことは重要だと思いますね。

 

 お金を掛けずに開業することももちろん一つの選択肢。お金をかけない開業というのは、それなりのものでしかないと私は思います。ある程度、お金をかけて開業しないと自分が思ったクリニック作りは出来ません。そういった意味では、自分が開業して何をやりたいのかということを明確にすること。お金の面も含めて全てを見据えた上で、お金がこれだけしかないからこの範囲内で準備しようというのではなく、これをしたいからお金を何とかしようという意気込みでないと、なかなか思うようにクリニック作りはできないと思います。

 自分がやりたい開業の形態、それをどこに定めるか、それによって場所も規模も変わってくる。それをしっかりと、多少のリスクを侵した上でもやりたいことなのかどうか、そういったところを考えてやれば間違いはないと思います。最初からリスクを確保して開業できるかです。リスクが大きいからといって萎縮して、やりたいこともやれないような形で開業してもモチベーションを保つことも難しいですし、患者さんも集まらないと思います。

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業者の説明に「翻弄」

クリニックモールでも患者が来るとは限らない

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開業日: H23年7月

開業年齢: 52歳

標榜科目: 内科

開業形態: クリニックモール

 

 前勤務先病院の人間関係もあり、開業を決意した。当時、別のアルバイト先の病院事務長に相談したところ、介護ケア付き高齢者専用住宅とクリニックモールがこの場所に建設されることを知りました。当時この場所は、さら地の状態でした。他の物件を見ましたが、内科・整形外科・眼科・皮膚科のクリニックモールで介護ケア付き高齢者専用住宅も経営されるなど、患者の確保が見込めると判断し開業することにした。クリニックモールは、大手スーパーが土地を所有しており、建設会社は、スーパー側からクリニックモールの管理業務も委託されて運営されていました。さら地の状態のときに、診療圏調査を3社から出してもらったが、全く役に立たなかった。医院の近くを線路が通り、線路の向こう側も患者見込み数になっていました。この付近の線路は小さい踏切も多く、線路向こうからも現在患者さんは来るようになっていますが、距離が近くても住民の意識として、線路や大きい幹線道路をはさんでいる場合やバスなどの交通機関の便からだけでは患者数を読めない場合があります。参考程度にしておいた方が無難です。

 

  病院事務長から紹介された医療機器卸業者に依頼し、開業準備を始めたがトラブルは沢山ありました。開業までのスケジュールが決められているが、レントゲンの搬入日が遅れそうになり焦りました。納品が遅れることで、保健所へ提出する書類の作成も遅れ、開業許可が遅れれば、開業予定日が1カ月遅れる事態になる。間に合いましたが、開業支援担当と営業部門では行き違いもあるので注意が必要です。また、内装工事は、設計図通りに施工されているか、点検することを勧めます。特にコンセントの位置は、パソコンや医療機器等の配置などで、当初の図面と設置場所を変更することもあり、修正を指示できるよう頻回に足を運びチェックすべきです。

 

 開業後には、洗面台の排水口から異臭がするなどトラブルは予想外に発生します。また、私以外の他のクリニックも同時に開業し、オープン時には高齢者住宅の入居が決まっているとの事前説明でしたが、実際は、高齢者の入居者はほぼゼロでした。更に、クリニックは私と整形外科だけのオープンでした。業者は「震災の影響があった」という説明がされましたが、真意は定かではありません。当初から集患に影響がでました。

 また、クリニックモールの中で、一番いい区画と勧められ開業したところは、商店街通りから見ると裏側になり、患者から「どこにクリニックがあるかわからない」といわれる状態です。商店街通路には調剤薬局が入り、目につくのはそちら側でした。クリニックの看板を出したいと申請しても、スーパー側の同意が得られないと簡単に断られました。家賃交渉もしたが、高めで金額設定されており、必ずスーパー側の意向が示され、運営会社の協力は期待するほどは得られないことを覚悟すべきです。また、駐車場代も周辺不動産の相場としては望外の高さで、契約時に「すでに他の方は賛同されています」と言われしぶしぶサインしてしまいましたが、本当はそうではなく、失敗したと思いました。契約前の色々な価格はじっくりと値切り交渉をした方がよいです。できれば交渉に慣れた方をパートナーに協力いただくのも手です。

 

  開業しても患者が来なく、非常なストレスが続きました。銀行から6000万円の融資を受け、運転資金は税理士の指導もあり2000万円を準備しました。万一の時に備え、自己資金も念頭にしておくと安心です。1年経過し、やっと口コミで患者数が徐々に伸びはじめたが、まだ安心できません。クリニックモールの開業でも、患者が来るとは限りません。開業の1カ月前は、オープンに向けてとても忙しい日々が続きます。医院経営、人事、労務など勤務医時代に経験したことが無いことが急激にかかわり、一方で予想外のことが発生するなど気が抜けません。私の場合、開業後も患者数が伸びないというストレスが加わりました。体調管理は、かなり注意が必要だと実感しています。

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女性起業家を支援する

好待遇な融資制度を活用

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開業日: H23年5月

開業年齢: 39歳

標榜科目: 婦人科

開業形態: 一戸建て(所有地)

 

 勤務医時代、当然「当直」が勤務体系に組まれていましたが、私はそのとき二児の母。特別な配慮、つまり子どもがいることで当直なしの特別な勤務体系を組んでもらってはいたものの、そのことに甘んじている自分、また当直なしの週2~3回のパート勤務では真剣に患者に向き合えないと思いました。医師を志した理由、それは患者さんと真剣な気持ちで一から向き合いたい、病気を診るのではなく、患者さんとのコミュニケーションを前提に痛みや苦しみと向き合いたい。そんな以前から心の中にあった医師としてのやりがい、そして子育ても手を抜かずに母として子どもとの時間を大切にしたい、その二つの両立のために開業を決意しました。 

  開業形態は一戸建てを選択。ビルテナントも考えましたが、テナント開業は多くの規制もあり、思い通りに事が進まないことや、何より毎月の賃料を払い続けるのであれば、自由にクリニック作りが出来る一戸建てで開業をスタートさせよう、そう思い勤務医時代からずっと貯めていた貯金により、駅から少し離れているものの、住宅街も近くにあり自分と同科のクリニックも少ない地域で、以前から気になっていたレトロな洋館の一戸建てを思い切って購入しました。

 

  しかし、それからが本当に大変でした。土地や建物は交渉により予想内の金額で購入できたものの、家に入り詳しく調査してみると、ビー玉を床に置けば、自分の下を離れ転がる始末。なんと家が傾いていたのです。そこで、予想以上の解体・内装工事費用がかかることが、購入してから判明しました。それからは、いかにして工事費用を予算内に収めるか、但し自分が納得のいくクリニックの雰囲気には近づけたい。その二つの気持ちの狭間で、妥協できるところは妥協し、なるべく多くの借金は作らないよう予算内に収めることを前提にクリニックの内装作りが始まりました。

  まずは資金。いくつかの金融機関と交渉に入ったのですが、そのうちの一つであった政策金融公庫では、女性起業家を支援する制度があり、設備資金に対する利率が優遇されることが判明。この制度を利用し、解体、内装、設備等の資金調達を計りました。工事については、大手ハウスメーカに全てお願いすると当然ながら予算をオーバーしたので、建設業界にいる親戚の紹介により、解体料込みで内装もお願いできる業者に出会うことができ、なんとか工事に着工。クリニックの机や椅子などの備品については夫と協力し、自分たちで寸法を測り、インターネットや通販など一番安い店を選択して購入するなどの工夫を行いました。

 また同科のクリニックで、自分の開業と同時期に閉院するところがあるということを先輩から聞き、その先生に交渉して、未だ使えそうな医療機器などを優遇した値段で譲ってもらったりもしました。内覧会においても、なるべくコスト削減を前提に、当日内覧会に来ていただいた方に御礼に渡すペンや紙袋なども専門業者に頼むのではなく、インターネットで一番安い店を探し準備。クリニックの紹介カードやチラシ、クリニックのロゴマークについても、デザイナーである自分の患者様のご厚意でクリニックのロゴをデザインしてもらいました。カードなどの印刷は、自分で近くの印刷屋に持ち込んで作製しましたね。低コストだけれども決して妥協だけはしたくない、自分で出来るところは自分で行い、周りのあらゆる方の協力の下、どうにか無理のない範囲で開業をスタートさせることができました。

 

  全て予算をいくらにするかです。しかし、それをいかにその範囲内に収めるかが、開業後借金で苦労しないポイントだと思います。そのためには、周りの力を借りながら自分で出来るところはとことん追求する、そうすることで意外なところをコスト削減できたりするので、“頼れる所には頼る”、これも重要だと思います。 

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